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TOPICS日豪の強みをつなぎ、社会実装へ―「Australia-Japan Innovation Alliance Forum 2026」柏の葉で開催

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  • 柏の葉アーバンデザインセンター[UDCK]
  • UDCK
  • 三井不動産株式会社

Mr. Susumu Kataoka

2026年10月2日、Australia Japan Business Co-operation Committee(AJBCC)が主催する「Australia-Japan Innovation Alliance Forum 2026」が柏の葉カンファレンスセンターで開催されました。第5回となる本フォーラムには、日本とオーストラリアの企業、大学、研究機関、行政、投資家、スタートアップ支援機関などから多様な登壇者が集い、イノベーションを生み出す都市・研究開発拠点のあり方から、研究成果の事業化、日豪共同での社会課題解決まで、幅広い議論が交わされました。

柏の葉が示す「公・民・学」連携のまちづくり

Dr. Atsushi Deguchi

冒頭の「Welcome to Kashiwanoha」では、三井不動産株式会社 執行役員 イノベーション推進本部長の山下和則氏が、柏の葉におけるまちづくりとイノベーション創出への取り組みを紹介。続くJETRO Welcome Speechでは、日本貿易振興機構(JETRO)理事長の片岡進氏が参加者を歓迎しました。

「Spotlight on Kashiwanoha」では、東京大学 理事・副学長/大学院新領域創成科学研究科 教授で、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長を務める出口敦氏が、柏の葉の開発の歴史と理念を紹介しました。柏の葉では、長期的なビジョンのもと、行政、民間企業、大学・研究機関が連携しながら、住宅、教育、医療、研究、産業を段階的に集積。社会環境の変化や災害などにも対応しながら、計画を柔軟に更新してきたことが現在のエコシステムにつながっています。

日本とオーストラリアの都市・イノベーション拠点から学ぶ

Mr. William Shang, Mr. Yu Yamamoto, Dr. Atsushi Deguchi, Mr. David Lawson, Mr. Peter Morley

午前の都市開発セッション「Developing Technologically Advanced and Efficient Cities and Precincts」では、柏の葉とシドニーのTech Centralなどを題材に、イノベーションを誘発する都市・研究開発拠点の条件が議論されました。パネル「How to make it happen – Planning, Design and Development」では、長期ビジョン、行政の支援、公民学連携、スタートアップと大企業の共存、そして「働く場所」だけでなく、住む・学ぶ・交流する機能を含む都市環境の重要性が共有されました。

ニューサウスウェールズ州側からは、Tech Centralが大学、交通拠点、スタートアップ、大企業などの集積を背景に成長していることが紹介されました。一方、柏の葉については、約20年にわたりビジョンを共有しながら公・民・学の連携を継続し、時代の変化に応じて計画を柔軟に進化させてきた点が特徴として示されました。

ニューサウスウェールズ州政府 Investment NSWのDavid Lawson氏からは、シドニーのイノベーション地区「Tech Central」が紹介されました。Central Stationを中心に、大学・研究機関、スタートアップ、テクノロジー企業、投資家などが集積する同地区は、交通利便性と多様なプレイヤーの近接性を生かし、イノベーションを生み出す都市拠点として整備が進められています。Lawson氏は、こうしたエコシステムの形成とともに、日本とニューサウスウェールズ州の間で投資や技術、企業の連携を広げていく可能性を示しました。

Dexus Property GroupのPeter Morley氏は、Tech Centralの中核プロジェクトの一つであるAtlassian Centralを紹介しました。Central Stationに隣接して建設が進む同プロジェクトでは、木材と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造や低炭素素材などを採用し、環境負荷の低減と新しいワークプレイスの実現を目指しています。単体の建築物にとどまらず、周辺の企業や人材、公共交通とつながることで、Tech Central全体のイノベーションを促す拠点となることが期待されています。

Vita PartnersのCEO、Bart Price氏は、ライフサイエンスやR&D、イノベーション分野に特化した不動産投資・運営の視点から、Macquarie Parkなどの事例を紹介しました。大学や病院、研究機関、企業、インキュベーターが近接することに加え、入居企業のニーズを理解し、拠点全体を継続的に運営していく専門性が価値を生むと説明しました。

また、ライフサイエンス企業は研究施設や設備に多額の投資を行うため、一般的なオフィスとは異なる長期的な関係が形成されやすい点にも言及。投資家にとっては、セクターの成長性だけでなく、テナントの信用力、賃貸借期間、施設への追加投資、周辺インフラや公的支援などを総合的に評価することが重要だと述べました。パネルでは、Macquarie Parkが大学・病院を核に比較的自然発生的に成長してきた一方、理想的なイノベーション拠点には、行政の強い支援や一体的な運営も重要との考えが示されました。

UR都市機構 ―キングスカイフロントの形成

Mr. Michael Back, Ms. Ryoko Gotoh, Mr. Bart Price, Mr. Daisuke Wada, Mr. Shiguma Fujita

UR都市機構の藤田詩久摩氏は、羽田空港の対岸に位置するキングスカイフロントを紹介しました。自動車工場跡地の土地利用を転換し、約40ヘクタールの地区にライフサイエンスを中心とする研究開発機関を集積。現在は約70の研究開発機関が立地し、5,000人を超える人々が働く拠点へと成長しています。

その形成過程では、川崎市、UR、民間企業が役割を分担し、都市計画上の規制緩和、税制優遇や補助金、核となる研究機関の誘致、企業間交流を促す施設整備などを組み合わせてきました。企業誘致後も、クラスター形成やエリアマネジメントを通じて交流・連携を促し続けている点が特徴です。2022年には多摩川スカイブリッジによって羽田空港と直結し、今後は空港周辺も含めたさらなる発展が期待されています。

パネルでは、大学・病院を起点に成長してきたMacquarie Parkと、行政が強く関与して新たな研究開発拠点を形成したキングスカイフロントを比較。拠点の成り立ちは異なっても、研究機関、企業、行政、金融機関、投資家など多様なステークホルダーが長期的に関与し、ハードとソフトの両面からエコシステムを育てることが重要との認識が共有されました。

不動産市場から見る日豪の投資環境

午前セッションの終盤には、日豪それぞれの不動産市場の現状についても報告がありました。オーストラリア側からは、Emerge CapitalのWilliam Shang氏から住宅・オフィスなどの需給や賃料、開発コストを含む市場動向が紹介され、都市・研究開発拠点への投資を考えるうえでも、実際の市場環境を踏まえる必要性が示されました。

日本側からは、SMBCの中村 奈津美氏が東京・大阪のオフィス、物流施設、住宅、不動産投資市場の主要指標を紹介。用途や地域によって市況は一様ではないとしたうえで、東京・大阪のオフィスでは空室率の低下と賃料上昇が続いていることなどを説明しました。

Western SydneyとBradfield――新たな都市・産業拠点への展望

Christopher Brown氏からは、Western Sydney Airport AerotropolisとBradfieldを中心とする西シドニーの都市・経済開発について紹介がありました。新空港を核に、先端産業や雇用を呼び込み、官民が連携して新たなイノベーション・エコシステムを形成する構想です。Brown氏は、西シドニーと千葉には、既存の大都市に隣接しながら、新たな空港や成長エリアを起点として次の都市・産業基盤をつくっていくという共通点があると指摘しました。

日豪企業の連携についても触れ、日本企業の技術や投資が西シドニーの成長に貢献する可能性を提示。柏の葉をはじめ日本の都市開発で培われた、研究・産業・住環境・交通を一体的に捉える考え方が、オーストラリアの新たな都市づくりにも示唆を与えることが示されました。

ライフサイエンスR&D拠点―「集積」から「協働」へ

ライフサイエンス・R&D拠点をテーマとした議論では、オーストラリアのMacquarie Parkと、日本のキングスカイフロントなどの事例が紹介されました。Vita PartnersのBart Price氏は、大学や病院、研究機関、企業、インキュベーターが近接することが、ライフサイエンス・R&D拠点の価値を高めると説明。Macquarie Parkでは、Macquarie Universityや病院を核に、バイオテクノロジー、医療機器、製薬、デジタルなど多様なプレーヤーが集積しています。

UR都市機構からは、羽田空港の対岸に位置するキングスカイフロントの事例が紹介されました。工場跡地をライフサイエンスの研究開発拠点へ転換し、行政による規制緩和や企業誘致支援、核となる研究機関の誘致、企業間交流やエリアマネジメントを重ねることで、現在の集積を形成してきました。議論では、大学・病院を起点に自然発生的に成長するモデルと、行政が強く関与して新たな核をつくるモデルの双方から、日豪が学び合える可能性が示されました。

研究成果を患者・社会へ―「From Discovery to Start-up」

Dr. Katsuya Tsuchihara, Dr. Miki Kinoshita, Ms. Stephanie Wood, Dr. Toshiyuki Nomura, Dr. Juran Kato

午後の「Panel Discussion 1 From Discovery to Start-up: Innovation precinct experiences」では、国立がん研究センター 理事・先端医療開発センター長の土原一哉氏をモデレーターに、GEXVal Inc.の加藤珠蘭氏、ANRIの木下美妃氏、三井不動産の野村俊之氏、The University of SydneyのStephanie Wood氏が登壇しました。

土原氏は、日豪ともに世界水準の科学研究力を有する一方、優れた研究成果を継続的に社会的・経済的インパクトへ転換することが共通課題だと提示。イノベーション拠点には、単に研究スペースを提供するだけでなく、研究成果の実用化、起業、事業化、グローバル展開までを支える人材、資金、ネットワークを形成する役割があると述べました。

木下氏は、科学的発見そのものは場所を選ばない一方、創薬では病院、臨床医、規制の専門家、CROなどへのアクセスが開発スピードを左右すると指摘。柏の葉では、会社設立前から臨床側と接点を持てる仕組みがあり、投資家にとってもプロジェクト評価や次のパートナー探索を進めやすいとし、イノベーション拠点の価値を「発見から患者までの距離を縮めること」と表現しました。

オーストラリアを活用したグローバル創薬とSydney Biomedical Accelerator

加藤氏は、希少疾患などアンメットメディカルニーズの高い領域での医薬品開発に取り組む中、科学面と事業面の双方からオーストラリアをFirst-in-Human試験の実施地として選択した経験を紹介しました。対象疾患に関する知見に加え、R&D税制などの環境を活用し、オーストラリアでPhase 1試験を完了。その後の欧州、日本を含むグローバル開発へつなげていることが語られました。

Wood氏からは、University of SydneyとSydney Local Health Districtが進めるSydney Biomedical Acceleratorが紹介されました。2028年の開設を予定する同拠点では、大学とRoyal Prince Alfred Hospitalをつなぎ、研究者、エンジニア、化学者、生物学者、臨床医、企業などが集う環境を整備。患者や臨床現場のニーズを基礎研究の段階から取り込み、規制や産業の知見も早期に接続することで、研究成果の社会実装を加速する構想が示されました。

日豪共通の課題を「co-innovation」で解く

Ms. Kaoru Nishinakagawa, Mr. David McKeering, Dr. Eri Hayashi, Mr. Brett Oberstein, Mr. Wataru Arai

「Panel Discussion 2 Bilateral impact: How to maximise the impact of innovation in Australia and Japan on common challenges」では、Australia Japan Innovation Fundの西中川薫氏をモデレーターに、日本植物工場協会の林絵理氏、NTT DATAのDavid McKeering氏、University of Technology SydneyのBrett Oberstein氏、MUFG Bankの新井航氏が登壇。農業、ネットゼロ、デジタル、宇宙などの領域から、日豪が共通して抱える課題に対する連携の可能性を議論しました。

両国には、ネットゼロ、食料安全保障、高齢化する労働力、地域の新たな成長源の創出など共通する課題があります。McKeering氏は、イノベーションは単独では生まれず、企業、パートナー、大学など多様な主体が協働することで、より大きな課題を解決できると強調。今後は、優れたアイデアを「共有する」関係から、共通課題に対して技術や事業を「ともにつくる」co-innovationへ進むことへの期待が示されました。

柏の葉発の植物工場技術―データ、AI、日豪連携へ

柏の葉に拠点を置く日本植物工場協会の林氏は、植物工場が、閉鎖環境の中でLED、水耕栽培、環境制御を組み合わせ、季節や天候に左右されにくい食料生産を可能にする技術であると紹介しました。土地面積当たりの高い生産性や水利用効率などの利点がある一方、人工光に伴うエネルギーコストなどが課題です。

さらに林氏は、日本のシステムをそのままオーストラリアへ移すのではなく、現地の作物、気候、社会ニーズを踏まえ、研究開発段階から協働することが重要だと指摘。植物の状態を捉えるフェノタイピング、IoT、AI、時系列データ解析などを活用し、生育環境をリアルタイムに最適化していくことが、次世代植物工場の可能性を広げるとの展望を示しました。

「アイデアを共有する」から「ともにつくる」へ

フォーラムを通じて繰り返し示されたのは、イノベーションを社会実装へつなげるためには、研究力や技術だけでなく、それを支える「場」と「つながり」が重要だということでした。研究機関や大学、医療機関、企業、スタートアップ、投資家、行政、金融機関が互いにアクセスできる環境をつくり、さらに国境を越えて人材、資金、規制、実証機会をつないでいくことが、次の成長につながります。

柏の葉は、公・民・学の連携を基盤に、まちそのものを新しい技術やサービスを育てる場として発展してきました。今回のフォーラムで生まれた対話を新たな起点として、柏の葉とオーストラリアのイノベーション拠点が互いの強みを生かし、研究成果を社会へ、そして世界へと展開していくことが期待されます。

 

 

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