TOPICS柏の葉×ヒューストン連携|J-ACT第1期参加者4名、ヒューストンの「Investor Day」でピッチ登壇 開催レポート
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- 国立研究開発法人 国立がん研究センター
- 三井不動産株式会社

米国ヒューストンで開催された投資家向けイベント「Investor Day」の「Therapeutics Summit」に、Japan Accelerator for Cancer Therapeutics(J-ACT)第1期の参加者4名が登壇しました。J-ACTの最終モジュールとして、約7カ月の学びをもとに、それぞれの研究・技術を起点とした事業構想を投資家の前で発表。大腸がんの難創薬標的に挑む低分子阻害剤、microRNAを腫瘍へ届ける核酸デリバリー技術、抗体を細胞内へ届けるデリバリー技術、「Dark Transcriptome」を活用したがんワクチンの標的探索と、日本で生まれた研究シーズを米国での事業化へつなぐ構想が示されました。
9月30日、米国ヒューストンで開催された「Investor Day」には、30名を超える投資家に加え、日本から8チーム、世界各国から33社のスタートアップが参加しました。その会場で、J-ACT第1期の参加者4名は、それぞれの研究成果を事業としてどのように発展させていくのか、その構想を発表しました。
J-ACTが目指す、日本発の創薬イノベーションの世界展開
J-ACTは、国立がん研究センター(NCC)、三井不動産、Texas Medical Center(TMC)Innovationの連携により、米国でのがん治療薬開発を目指す日本のアントレプレナーを支援するアクセラレータープログラムです。第1期には、NCCが運営するNCC Seed Acceleration Program(NCC SAP)に採択された11チームの中から、4名が選抜されました。
3月のオンラインセッションに始まり、4月にはヒューストンのTMC Innovation Factoryで2週間の現地プログラムを実施。その後もオンラインで、製造・医薬品開発、事業開発、規制対応・法務、資金調達・成長戦略といったテーマを学んできました。
米国の専門家や起業家、投資家との対話を通じて、研究成果を事業化するための課題や戦略を具体化してきた約7カ月。その集大成となったのが、今回の投資家向けピッチです。



J-ACT参加者4名のピッチ
「Undruggable」とされてきたβ-カテニンを分解へ導く
公益財団法人がん研究会 石﨑秀信氏
大腸がんの増殖に深く関わるWnt/β-カテニン経路。その中心となるβ-カテニンは、長く創薬が難しい標的とされてきました。石崎氏が発表したのは、β-カテニンを直接狙うのではなく、その制御に関わる酵素タンキラーゼを阻害することで分解へ導く低分子阻害剤「RK-582」です。切除不能進行・再発大腸がんを対象に、清宮啓之氏が率いるがん研究会がん化学療法センターのプロジェクトとして開発が進められています。
RK-582は、すでにFirst-in-Human試験の段階にあります。発表では、治療前後の生検検体におけるβ-カテニンの変化を示す染色画像を紹介し、研究開発の進捗を説明しました。さらに、他の治療との併用や次世代ADCへの展開構想にも触れ、新会社の設立と今後の臨床開発・事業開発に向けた資金調達の方針を示しました。


脂質を使わないナノ粒子で、microRNAを腫瘍へ届ける
愛知工業大学 宮本寛子氏
大腸がんの約40%にはKRAS変異が認められますが、その変異を直接標的とする薬剤で治療できる患者さんは一部に限られています。宮本氏が着目したのは、複数のタンパク質やシグナル経路を同時に制御できるmicroRNAです。ただし、核酸医薬の開発では、有効成分を目的の臓器や細胞へ効率よく届ける技術が課題となっています。
そこで宮本氏が開発したのが、脂質を使わず、核酸そのものをナノ粒子化する独自のデリバリー技術「RION」です。従来の脂質ナノ粒子(LNP)で課題となる肝臓への集積を抑え、腫瘍への高い集積性を目指しています。
発表では、RIONを活用してmicroRNAを腫瘍へ届ける研究成果を紹介するとともに、KRAS変異大腸がんを対象とした核酸医薬の開発構想を説明。今後は製造や臨床応用に向けた研究を進め、スタートアップの設立を目指す方針を示しました。


抗体を細胞の「内側」へ届ける
東京科学大学 総合研究院 本田雄士氏
現在の抗体医薬の多くは、がん細胞の表面にある標的に結合して作用します。一方、治療標的として重要な分子の多くは細胞の内側に存在しています。抗体が細胞に取り込まれても、その多くはエンドソームに閉じ込められ、細胞内の標的まで十分に届かないことが課題でした。
本田氏が開発しているのは、抗体をポリフェノール高分子と金属イオンからなるナノ粒子に内包するデリバリー技術です。抗体の細胞内への取り込みとエンドソームからの脱出を促し、これまで標的とすることが難しかった細胞内抗原への送達を可能にします。
発表では、この技術による細胞質への抗体送達や、がんモデルで得られた研究成果を紹介。事業化に向けては、独自の治療薬パイプラインの開発と、製薬企業との共同研究という2つの方向性を提示しました。
J-ACTへの参加を通じ、本田氏が手応えを得たのが、米国での市場性の検証です。日本では技術に対する反応をつかみにくかった一方、米国での1on1では具体的な質問や専門家の紹介につながり、技術の価値や事業化の可能性への認識が変化したといいます。また、臨床開発へ進む前に検証すべきことや、限られた資金の中で優先すべき研究開発についても、具体的な道筋が見えてきたといいます。


「何を標的にするか」から、がんワクチンを問い直す
国立がん研究センター 河知あすか氏
がんワクチン開発では、どのような分子を標的にするかが重要な課題となります。多くの患者さんに共通していること、がんに特異的であること、免疫原性が高いこと。河知氏は、これら3つの条件を満たす標的の探索について発表しました。
その鍵となるのが「Dark Transcriptome」です。従来の解析では十分に捉えられてこなかった転写産物の中から、がん特異的な治療標的を見つけ出そうとする研究です。
吉見昭秀氏が率いる国立がん研究センター研究所 がんRNA研究分野では、ロングリード解析などを活用し、こうした転写産物の探索を進めています。
河知氏は、これらの研究成果をもとに、多くの患者さんに共通するがん標的をスケーラブルに探索する「標的探索エンジン」としてのアプローチを紹介。見いだした標的をmRNAワクチンの開発へとつなげ、さらにスタートアップの設立や米国での臨床開発を目指す構想を発表しました。


研究を、患者さんに届く事業へ
4名がピッチで示したのは、研究成果そのものに加え、それを誰に届け、どのような道筋で事業化していくのかという構想でした。
J-ACTを通じて、研究者たちは米国の専門家や起業家、投資家との対話を重ね、創薬開発の進め方や事業化に必要な視点を学んできました。研究開発の優先順位、資金調達、パートナーシップの構築など、それぞれの課題を具体化したうえで臨んだInvestor Dayでのピッチは、今後の実用化に向けた重要な一歩となりました。


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