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TOPICSJ-ACT参加者インタビュー Vol.1 石﨑秀信氏「一人のアントレプレナーとして、どう動くかを考えるようになった」

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  • 国立研究開発法人 国立がん研究センター
  • 三井不動産株式会社

国立がん研究センター(NCC)、三井不動産、Texas Medical Center(TMC)Innovationの連携による、米国でのがん治療薬開発を目指すアクセラレータープログラム「Japan Accelerator for Cancer Therapeutics(J-ACT)」。第1期の参加者4名は、約7カ月にわたるプログラムを経て、9月30日にヒューストンで開催された「Investor Day」で投資家向けピッチに臨みました。

本インタビューでは、参加者一人ひとりに、J-ACTを通じて、研究開発の成果を事業化へとつなげるために何を学び、どう動き始めたのかを伺います。第1回は、大腸がんの新たな治療薬「RK-582」の実用化を目指す、公益財団法人がん研究会の石﨑秀信氏です。

石﨑 秀信(いしざき ひでのぶ)
公益財団法人がん研究会 先進がん治療開発センター センター長
2015年、国立がん研究センター発ベンチャーに認定されたノイルイミューン・バイオテック株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在は、がん研究会がん化学療法センターが開発したタンキラーゼ阻害剤「RK-582」の実用化に取り組む。同プロジェクトは2024年度にNCC Seed Acceleration Program(NCC SAP)に採択。

――まず、研究内容について教えてください。
私たちが開発を進めているのは、切除不能な進行・再発大腸がんに対する新しい治療薬「RK-582」です。大腸がんの増殖に深く関わるβ-カテニンは、重要な標的でありながら、長く「Undruggable」、つまり創薬が難しい分子とされてきました。RK-582は、β-カテニンの制御に関わる酵素タンキラーゼを阻害することで、β-カテニンを分解へ導く低分子阻害剤です。

このRK-582は、清宮啓之先生が率いるがん研究会がん化学療法センターのプロジェクトとして独自に開発されたもので、現在はFirst-in-Human(FIH)試験の段階にあります。大腸がんの後方ライン治療では、現行の治療薬の奏効割合が1〜4%程度にとどまっています。RK-582を、こうした患者さんへの新たな治療選択肢として届けたいと考えています。将来的には免疫チェックポイント阻害剤などとの併用も視野に入れ、スタートアップの設立による実用化を目指しています。

石﨑秀信氏|TMC Innovation主催「Therapeutics Summit」でのピッチ発表

――J-ACTに応募されたきっかけは何だったのでしょうか。応募当時、課題を感じていたことがあれば教えてください。
一番の動機は、米国のエコシステムに直接触れられることでした。日本でいろいろと取り組んでいても、現地で今何が動いているのかは見えません。そこに行けるチャンスをいただけるのは、本当に大きいと思いました。

課題として感じていたのは、資金調達です。大型の調達を日本国内だけで行うのは、なかなか難しいだろうという認識がありました。米国に軸足を移すベンチャーの話もVCの仲間から聞いていて、実際に体験しないとわからないだろうと考えていました。

――J-ACTを通じて、事業化に対する考え方や取り組み方にどのような変化がありましたか。
これまでは、がん研究会という治験実施施設にいる人間として、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの問題をどう解消していくか、海外の新興バイオ医薬品企業(EBP)にどう対応していくかを考えてきました。それがJ-ACTに参加して、一人のアントレプレナー、一つのベンチャーとしてどう動くかを考えるようになったんです。

治験を受け身で呼び込むのではなく、自分たちで開発を回していく。それも米国だけでなく、日米同時に進めていく。日本でも開発を進めているベンチャーがいることが見えれば、海外のEBPにとっても「日本でやってみよう」という選択肢になるはずです。いまFirst-in-Human試験を日本で行えば、コストは米国の約半分です。米国ではインフレが進み、人件費をはじめあらゆるコストが上がっていますし、FIHに対するFDAの審査も厳しくなっています。グローバル製薬企業がオーストラリアへ目を向けるなど、別のアプローチも始まっている。そこに日本が入っていけていないことには、歯がゆさを感じています。

J-ACTのプログラムは本当にすべてが良かったです。むしろ、もっと早く受けたかったと思っています。

――ヒューストンでの現地プログラムを含め、特に印象に残った学びを教えてください。
率直に言うと、Non-dilutive fund(株式の希薄化を伴わない資金)を活用するという考え方が、意外すぎました。米国ではVCから次々と資金を集めて、どんどん開発を進めていると思っていたんです。ところが実際には、手堅くNon-dilutive fundを活用している。ヒューストンだからかもしれませんが、テキサス州にはCPRIT(Cancer Prevention and Research Institute of Texas)という大規模な公的資金があり、それを活用しない手はない、という考え方です。まさに目から鱗でした。

Non-dilutive fundで開発を進め、臨床での初期データをある程度得たうえでVCからの調達に入る。だからこそ、シリーズAで大型の調達が可能になるのだとわかりました。レピュテーションだけで大規模な調達はできないと思っていましたが、臨床データを持ってから調達に入れるのは強い。希薄化を抑えながら、企業価値を大きく高められる。これは、ここに来なければわからなかったことです。

――米国での事業展開を考えるうえで、具体化したことや、新たに見えてきた課題はありますか。
会社の形としては、米国に親会社を置き、日本に子会社をつくる形になると考えています。米国だけですべてのオペレーションを行うのではなく、R&Dは日本の子会社で進める。CPRITのような資金を獲得したり、米国からの投資を受けたりするには、米国側に親会社を置き、マネジメントに現地の人材を入れるといった条件を整える必要があります。一方で、知財をどこが持つのかなど、課題はいくつも出てくると思います。

日米の違いも、より鮮明に見えるようになりました。米国には、専門性が高く、かつ深いバックグラウンドを持つ人材が多くいます。たとえば研究のバックグラウンドを持つ法務の専門家や、理系から文系に転向した方もいて、法務の中でもそれぞれの専門分野がある。日本ではそういった人材はまだ少なく、特に知財に対応できる人材が大学やスタートアップに十分に供給されていません。人材の厚みという点では、まだまだかなわないと感じました。

――J-ACTでの経験を踏まえ、今後どのようなステップで事業化・米国展開を進めていきたいと考えていますか。
米国展開は進めていきたいと考えています。そのためのチームビルディングをどうするか、会社をいつ、どのような形で設立するかを検討しているところです。また、開発をどのような順番で進めていくべきか、薬事戦略についても専門家に具体的に相談していきたいと考えています。ベンチャーをつくったら、誰かに教えてもらうのを待つのではなく、自分たちで走らなければいけませんから。

――最後に、グローバル展開を目指す若手研究者へのメッセージをお願いします。
私自身まだ実践している段階なので、メッセージを出せる立場ではないと思っています。ただ、誰かが出ていけば、きっと次がどんどん出てくる。とにかく行かなければ始まりません。うまくいくにしても失敗するにしても、その結果を伝えたいと思っています。

だからこそ、このプロジェクトは本当に大事です。第2期生もきっと来るでしょうし、その人たちが何を感じ、どう動くのか。それがつながっていけばいいなと思っています。

 

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