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TOPICSJ-ACT参加者インタビュー Vol.4 河知あすか氏「一人でピッチに立つために、多くの人が支えてくれた」

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  • 国立研究開発法人 国立がん研究センター
  • 三井不動産株式会社

国立がん研究センター(NCC)、三井不動産、Texas Medical Center(TMC)Innovationの連携による、米国でのがん治療薬開発を目指すアクセラレータープログラム「Japan Accelerator for Cancer Therapeutics(J-ACT)」。第1期の参加者4名は、約7カ月にわたるプログラムを経て、9月30日にヒューストンで開催された「Investor Day」で投資家向けピッチに臨みました。

本インタビューでは、参加者一人ひとりに、J-ACTを通じて、研究開発の成果を事業化へとつなげるために何を学び、どう動き始めたのかを伺います。最終回となる第4回は、「Dark Transcriptome」を標的としたがんワクチンの開発に取り組む、国立がん研究センターの河知あすか氏です。

河知 あすか(かわち あすか)
国立がん研究センター研究所 がんRNA研究分野 研究員
吉見昭秀氏が率いる同研究分野で、がん細胞で特異的に発現する「Dark Transcriptome」を標的としたmRNAがんワクチンの開発に取り組む。同プロジェクトは2025年度にNCC Seed Acceleration Program(NCC SAP)に採択。

――まず、研究内容について教えてください。
私たちが取り組んでいるのは、がん細胞で特異的に発現する「Dark Transcriptome」を標的にしたmRNAがんワクチンの開発です。がんワクチンの開発では、どの分子を標的にするかが大きな課題になります。多くの患者さんに共通していること、がんに特異的であること、免疫原性が高いこと。この3つを同時に満たす標的を見つけなければなりません。

従来の解析では、注釈のない転写産物の多くが見過ごされてきました。吉見昭秀先生が率いる国立がん研究センター研究所 がんRNA研究分野では、独自の解析パイプライン「DT finder」を開発し、こうした転写産物の中から、がんに特異的な治療標的を探索しています。がん種を超えて共有される抗原を標的とすることで、幅広い患者さんに使えるoff-the-shelf型の治療ワクチンを実現し、将来的にはがん予防ワクチンへの展開も見据えています。

河知あすか氏|TMC Innovation主催「Therapeutics Summit」でのピッチ発表

――J-ACTに応募されたきっかけは何だったのでしょうか。応募当時、課題を感じていたことがあれば教えてください。
最初から、ものすごく興味はありました。ただ、参加することでどれくらいのインパクトがあるのか、何を知ることができるのかはわかっていなかったので、「興味はあるけれど」というくらいの気持ちでした。正直なところ、前臨床のPOCを取ってからでないと、実践的なアドバイスをもらうのは難しいのではないかと思っていたんです。

――J-ACTを通じて、事業化に対する考え方や取り組み方にどのような変化がありましたか。
一番印象的だったのは、課題への向き合い方の違いです。日本では、わからないことが出てきたとき、できるだけ内部で片付けようとしがちです。でも米国では、サイエンスはもちろん、規制や安全性も含めて、むしろ積極的にネットワークを広げて多くの人に相談していく。そして、そこで本当に信頼できるアドバイスが得られる。それが一番インプレッシブでした。

いろいろな方から助言をいただく機会がありますが、エッセンスは結局どこも同じだと思っています。誰に何を頼るのかは、正直なところ相性と、自分がどこを選ぶか。たくさんの方から意見をもらうことで、迷ってしまうということはありません。

国立がん研究センターでは、研究シーズの事業化を支援する立場でもあります。その立場から見ても、考え方が大きく変わりました。これまで日本の支援の現場では、「アーリーだから仕方ないよね」「POCを取っていないから何も言えないよね」というスタンスになりがちでした。でもJ-ACTを通じて、アーリーだからこそ、最初のマイルストーンがはっきりしていることがわかったんです。in vivoの前臨床POC、できる限り取得した安全性データ、そして知財の出願。この3つです。

POCを取る前の先生方とも、この目標を共有しなければいけない。そして支援する側としては、会社を立ち上げるための強い知財や、規制に向けて今取れる安全性データに加えて、ビジネスモデルも一緒に準備し、「いってらっしゃい」と送り出せるようにサポートするのが理想なのだと、何をすべきかが具体的に結びつきました。

一方で、自分が学んだことを日本のチームとどう共有し、目線をそろえていくかは、これからの課題だと思っています。

――ヒューストンでの現地プログラムを含め、特に印象に残った学びや、その後実際に取り入れたことを教えてください。
一番ためになったのは、現地に来て、サポートの層がこれほど厚いと知ったことです。アカデミアの科学者一人では、うまく進めることはできない。多くの人に導いてもらって、初めて事業化ができるのだということを、現地で目の当たりにしました。それを知ったうえでオンラインのプログラムを受けられたのも大きかったです。オンラインだけだと、どこか仮想空間のようでリアリティがありませんが、現地で実感できたことで、受け止め方が変わりました。

ピッチの準備でも、スライドのつくり方から、プレゼンテーションの仕方、発音まで、サイエンス以外の部分まで本当に丁寧にサポートしていただきました。一人でピッチに立つために、多くの人が後ろで支えてくれて、ようやく立つことができる。そう実感しました。

実際に取り入れたこととしては、知財の出願があります。TMCでお世話になった知財の専門家を吉見先生におつなぎし、経験のある方に担当していただけるようサポートできました。

――米国での事業展開を考えるうえで、具体化したことや、新たに見えてきた課題はありますか。
最初のマイルストーンは、やはり前臨床のPOCを取ることです。そのうえで、特にヒューストンでの最後の2日間を通じてクリアになったのが、その先の道筋です。まずPOCを取り、日本で医師主導治験(IIT)まで進める。そのデータを持ってヒューストンに戻ってきたら、CPRIT(Cancer Prevention and Research Institute of Texas)に応募して、米国のチームを集めて、会社を立ち上げる。それが現実的な道ではないかと、かなり具体的に見えてきました。この半年間に学んできたことが、一本の線でつながったような感覚です。

国立がん研究センターにいる立場を考えると、日本でIITや第I相試験まで進めるところは、かなりのサポートを受けられると思っています。日本の臨床試験で得たPOCデータを持って、米国のリスクマネーや大型の資金を取りにいくのが、最も現実的だと考えています。次のチャレンジは、その期間をどこまで短くできるかです。

製造も、逆算して考えると重要なポイントです。米国で資金調達をするのであれば、米国で製造できることが一番大事になります。日本に拠点がある、あるいは技術移管の経験があるCDMOと連携することが重要だと考えています。こうした先の見通しは、J-ACTに参加していなければ、まったく見えていなかったと思います。

――J-ACTでの経験を踏まえ、今後どのようなステップで事業化・米国展開を進めていきたいと考えていますか。
まずは、自分たちのサイエンティフィックなPOCにどれだけ自信を持てるか。そこに次をかける価値があるのかを見極めながら、挑戦してみてもいいのかなという気持ちになりました。これから次のマイルストーンの解像度を上げていく中で、「この人に聞こう」と思えるネットワークがあるのは大きいです。J-ACTで得たつながりを生かしながら、一歩ずつ進めていきたいと思います。

――今後のJ-ACTに期待することはありますか。
現地では、すでに会社を立ち上げる場所を探しに来ている方々と一緒になる機会もありました。お話を伺うと、私たちもそのステージであれば、概念的な話にとどまらず、より実践的に現地のネットワークを生かせたのだろうと感じました。参加者のステージによって得られるものは変わってくると思うので、選考やプログラムの組み立てにも、その視点があるとさらに良くなるのではないかと思います。

――最後に、今後J-ACTへの参加を検討している方へメッセージをお願いします。
一緒に頑張りましょう、という気持ちです。今回、ゆうとさん(本田先生)やのりこさん(宮本先生)と一緒に参加できて、お互いの成長を見ることができましたし、普段は会えない、同じ方向に向かって頑張る仲間と相談し合えたことは本当に大きかったです。少し先を進んでいるのぶさん(石崎先生)が、ご自身のアントレプレナーとしての経験をフィードバックしてくださることもありました。こうした横のつながり、アルムナイの仲間が、これからもっと増えていくといいなと思います。

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