TOPICS【エクセルギー・パワー・システムズ株式会社インタビュー】「再生可能エネルギーの大量導入に関する課題を解決し、持続可能な社会の実現に向け貢献していきたい」
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- エクセルギー・パワー・システムズ株式会社

柏の葉で毎年開催している国際ビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード」。東京大学発のスタートアップ、エクセルギー・パワー・システムズ株式会社は、2019年にこのコンテストに参加したことをきっかけに柏の葉スマートシティでの事業展開に向け準備を進めています。同社の事業内容や柏の葉での計画について、CEOのマイク・ムセル・イグナス様にお話をうかがいました。聞き手は三井不動産柏の葉街づくり推進部の金田昂です。
独自のパワー型蓄電池とエネルギーマネジメントシステムにより、再生可能エネルギーを大量導入した際の課題を解決します。
―まず、御社の事業内容や独自性・強みについて教えてください。
私たちは、東京大学の研究成果を活かした独自のパワー型蓄電池と、デジタル・ハイブリッド・コントローラーを活用した分散型バックアップサービスによって、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)大量導入に伴い発生する課題を解決する事業を行っています。
脱炭素が世界的な課題となる中、再エネ比率拡大は人類全体にとって重要なミッションですが、じつは再エネを大量導入すると大きな問題が発生します。
電力は需要量(使用量)と供給量(発電量)がバランスしていないと、「電気の質」である周波数が乱れて停電につながるのですが、太陽が陰ると発電量が急減する太陽光発電や風が弱まると発電量が急減する風力発電といった再エネの導入が進むと、天候や時間帯での発電量増減による電力の需給バランスの乱れに伴う停電リスクが高まってしまうのです。このため、電力の過不足をバランスさせるための調整が重要になります。
私たちは、独自開発したパワー型蓄電池と、デジタル・ハイブリッド・コントローラーを活用した分散型バックアップサービスによって、電力の過不足が発生した際に送配電事業者が電気の質(周波数)を維持するための「調整力」、及び、電力需要家のBCP(事業継続計画)対策等のための「UPS(無停電電源装置)」ニーズに応えています。
停電リスクを軽減しながら再エネ比率を増やすことを可能にすることで、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。
―分散型バックアップサービスについて詳しく教えて下さい。
独自の特許技術により、小容量で高出力の電力を瞬発的かつ連続して充放電できるという特徴を持つパワー型蓄電池と、継続的に運転可能であるが電力供給開始までに時間を要する自家発電機等の分散型エネルギーリソースを、独自のデジタル・ハイブリッド・コントローラーで自動的且つ正確にハイブリッド連携制御することで、短時間から長時間までの電力供給を行うことを可能とするサービスになります。
電力が必用になった場合、パワー型蓄電池が瞬時に電力供給を開始し、少し遅れて電力供給を開始する自家発電機等の分散型エネルギーリソースにハイブリッド連携していくことで、短時間から長時間の電力を効率的に供給出来るわけです。
再エネ比率で日本の先を行くアイルランド・英国ですでに商用稼働を実現。その経験・ノウハウを基に、日本での事業展開を目指しています。
―こうした話は一般にあまり知られていないように思いますが、再生可能エネルギーの比率を増やしていくのに非常に重要な技術なのですね。再エネ比率に関して、現在の日本の状況はいかがでしょう、やはりあまり進んでいないのでしょうか。
日本においても水力発電等の再エネが活用されてきましたが、アイルランドや英国に比べると再エネ比率は低い水準にとどまっています。ただ、日本政府も2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画で「2030年度までに再エネ比率を36%~38%に倍増させる」との目標を掲げておりますので、電力の需給バランス調整を含めた制度設計が進んでいくと考えております。
―なるほど。御社は日本に先んじて、まずアイルランド・英国で事業を本格化されていますが、それは再エネ活用が進んでいるからということでしょうか。
はい。アイルランド・英国ではいち早く風力発電を中心とした再エネ大量導入を推進した結果、2020年にアイルランド島で年間平均40%以上(冬季最大70%)、グレートブリテン島でも年間平均40%以上を達成しています。再エネ大量導入に伴うニーズ・市場が顕在化していますので、日本に先行し商用事業を展開しています。
2030年までには、アイルランド島で年間平均80%(冬季最大95%)、グレートブリテン島で年間平均95%(カーボンニュートラル電源)まで再エネ比率を高める目標が掲げられていますので、さらなるニーズ・市場の拡大を見込んでいます。
―そこで培った経験・ノウハウを基に、日本での事業展開を図るということですね。
他国・地域からの電力融通が困難な国・地域において再エネの導入を進めると、電力の需給バランス調整ニーズが特に高まりますので、島・半島をターゲットにグローバル展開していこうと考えています。
その大きな軸が、アイルランド・英国から日本への展開ということになります。
―需要家としてはどのようなところを想定しているのでしょうか。
基本的な考え方としては、自家発電機等の分散型エネルギーリソースを既に所有し、BCP対策に対する意識の高い需要家が私たちの分散型バックアップサービスとの相性が良いと考えております。
アイルランド・英国においては、工場、病院等を中心に事業展開を進めておりますが、スマートビルやスマートシティ、将来的にはデータセンターへの展開を想定しております。
2030年から2035年、さらにその先の未来のために、柏の葉スマートシティと一緒に進化していきたい。
―その計画の一環として、現在柏の葉での事業展開を準備されています。内容について教えてください。
柏の葉スマートシティでは、2006年の街びらき以来、世界に先駆けてAEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)を導入されていますが、現在更なる進化に向けた取組を進めていると伺っています。
新たに設置する当社のパワー型蓄電池と、柏の葉スマートシティの既存分散型エネルギーリソースを当社のデジタル・ハイブリッド・コントローラーで連携制御することで、分散型バックアップサービスとして活用できることを実証する予定です。今年度中に設置を終え、来年度に稼働を開始したいと考えています。
―稼働が楽しみです!事業フィールドとしての柏の葉について、感じていることを教えてください。
アイルランド・英国での商用実績があると言っても、私たちが展開するエネルギー・インフラ関連事業において信用に乏しいスタートアップの技術・サービスは簡単に導入していただけるものではありません。然るべき手順を踏まないと、日本での展開は難しいと考えております。
今回、日本でフルスケール実証の機会を頂けたのは、本当に有難いことです。しかもそれが柏の葉スマートシティだということで、絶大な信用につながると期待しています。
―そう言っていただけると嬉しいです。では最後に、今後の事業展開、そしてこれからの柏の葉に期待することについてお聞かせください。
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、日本の10年先を行っているアイルランド・英国からの逆輸入というストーリーで日本国内への展開を進めていきたいと思っています。柏の葉スマートシティへの導入は、そのための非常に重要なプロセスだと考えています。
柏の葉スマートシティでは、2014年の駅前街区「ゲートスクエア」オープンの際に2030年を見据えたビジョンを定め、現在はそれに向かって様々な活動を進めていると承知していますが、2030年はもうすぐそこまで来ています。私たちは2030年から2035年、さらにその先の未来のために、柏の葉スマートシティと一緒に進化していきたいと思っています。
―三井不動産にとっても、脱炭素は極めて重要なイシューです。ぜひ一緒に歩んでいけたら嬉しいです!
そうですね、お互いに「使い倒して」いきましょう(笑)!
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