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TOPICS【東京大学「産学官民連携棟」 インタビュー】「様々なレイヤーの連携を構築することにより世界の課題を解決するイノベーションを生み出そうと、日々模索、奮闘しています。」

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  • 東京大学柏Ⅱキャンパス 産学官民連携棟

東京大学柏Ⅱキャンパスには、立場を越えた共創によるイノベーション創出を促進するための施設「産学官民連携棟」があります。ここでは、柏の葉とつくば、本郷を繋ぐ「つくば-柏-本郷イノベーションコリドー」をはじめとする様々な活動が行われています。この施設と活動について、東京大学TKHiC(つくば-柏-本郷イノベーションコリドー)推進室特任専門員兼TIA事務局次長の片山秀様にお話をうかがいました。

産学協創を実証する拠点としてモデルケース(成功事例)となり、この拠点の活動からイノベーションを起こしたい。

―まず、「産学官民連携棟」の目的、設立の経緯について教えてください。

民間企業を中心とする産業界と大学との連携は、オープンイノベーションを志向する産業界にとっても、研究成果や技術を社会に還元すべき大学にとっても非常に重要な課題です。社会課題が複雑化し、技術が高度化・細分化している近年、その社会的必要性はより高まっています。「産学官民連携棟」は、「産学」に「官・民」も加えた多様なプレイヤー・・・柏の葉スマートシティでは「公民学」と言っていますが、これによる共創促進のためにつくられました。産学協創を実証する拠点としてモデルケース(成功事例)となり、この拠点の活動からイノベーションを起こしたいと考えています。

設立の経緯としては、まず2016年末に文部科学省の「地域科学技術実証拠点整備事業」の一つとして「産学官民の改革を駆動する産学協創プラットフォーム拠点」で採択され、オープンラボとインキュベーション施設が設置されました。さらに、ここにデザイン要素を加えるために、本学生産技術研究所の「DLXデザインラボ」が参画。この3つのブロックの連携により、大学がその研究成果を産業化し社会貢献するための実証拠点としての機能を整えました。

―具体的にはどのような活動が行われているのでしょうか。

産官学民の協働・共創を促進するため、「つくば-柏-本郷イノベーションコリドー(TKHiC)推進室」として、様々な組織・施設との連携を構築しています。

まず学内の連携としては、この「産学官民連携棟」内3ブロックの連携、つぎにこの連携棟がある「柏Ⅱキャンパス」内の情報基盤棟および産業技術総合研究所(以下「産総研」)柏センターとの連携、さらに東京大学の各キャンパス、柏-本郷-駒場間の連携です。

また、外部との連携としては、産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構、東北大学と東京大学が協力して運営するオープンイノベーション拠点『TIA(つくばイノベーションアリーナ)』の事務局として活動しています。
さらに、千葉県内のアカデミア8機関の連携「ちばiネット」にも参画しています。

こうした様々なレイヤーの連携を構築することにより、なんとかイノベーションを生み出そうと日々奮闘、模索しています。

[東京大学つくば-柏-本郷イノベーションコリドー(TKHiC)推進室:https://www.kashiwa.u-tokyo.ac.jp/corridor/index.html

オープンラボ、生産技術研究所、インキュベーション施設の3つのブロックによる活動で、開発・事業化の事例を生み出していきます。

―「産学官民連携棟」は、オープンラボ、生産技術研究所、インキュベーション施設の3つのブロックで構成されているとうかがっています。それぞれの概要と特長について教えてください。

はい。まずオープンラボは、基礎研究等で生まれた研究成果等を踏まえ、産学官による共同研究開発を通じて、事業化の加速等を図る施設です。東京大学の先進的な研究分野の教員が入居して、社会貢献できる研究を行っています。
具体的には、新領域物質系(新材料ポリマー)・伊藤/横山研究室、新領域バイオ系(生命データ)・鈴木穣研究室、情報理工(ロボット)・稲葉/岡田研究室、物性研究所(レーザー加工)・小林研究室、医学系(クライオ電顕)・吉川研究室、共通機器室(工学系管理)の6つの研究室などが入っています。
新材料、バイオ、ロボットやドローン、量子エレクトロニクス、創薬開発のプラットフォームからEM(電子顕微鏡)などの機器提供まで、最先端の領域を幅広くカバーしています。

―いわゆるディープテックにおける注目領域の研究室が集積しているのですね。では、生産技術研究所はどういう施設なのでしょうか。

生産技術研究所は日本最大級の大学附置研究所です。110名を超える教授、准教授、講師のそれぞれが研究室をもち、国内外から1,000人を超える研究者が、基礎から応用まで、工学のほぼすべてをカバーする分野で研究を行っています。その主な活動場所は駒場IIキャンパスと柏キャンパスで、この柏IIの産学官民連携棟では、DLXデザインラボと本間研究室(建築計画)が協働して、工学にデザインの視点を取り入れた新たな取り組みを行っています。日本のものづくりが世界のユーザーに対して真の豊かさを提供し続ける未来のため、その仕組み作り・人材育成を「価値創造デザイン(Design-Led X)」と名付け、推進しています。生産技術研究所だけでなく他グループと協働し、産官学民の力を結集させ、世界に類を見ない価値創造の場を形成したいと考えています。
代表的な設備としては、運転シミュレータや仮想環境構築に使える「4Dラボ」や、ポリマーや金属を自由に造形できる付加製造装置(3Dプリンター)などがあります。

―3つめ、インキュベーション施設について教えてください。

大学による最先端の研究成果を事業化するにあたってはスタートアップの力は欠かすことが出来ません。インキュベーション施設では、東京大学の教員と関わりのあるスタートアップが入居して事業活動を行っています。
代表的な企業として、農薬を中心にタンパク質立体構造情報を活用した構造生物学の産業応用を推進する株式会社アグロデザイン・スタジオ(https://www.agrodesign.co.jp/)、 超分子ポリロタキサンを用いた架橋点が滑車のように作用する合成樹脂改質剤の開発・製造・販売を行う株式会社ASM (https://www.asmi.jp/)などがあります。
また、柏の葉周辺のアカデミアと連携しライフサイエンス企業を集積することで新たな医療技術・サービスを創出することを目的とする、一般社団法人柏の葉オーミクスゲート(https://www.kog.or.jp/)も、ここを拠点としています。ここでは2020年12月より、ゲノム解析基盤となる計算機環境の運用を本格的に開始しています。

―開発や事業化の具体的な例としてはどのようなものがあるのでしょうか。

研究開発の事例としては、たとえば小林研究室では、「匠の技:経験と勘から最適化へ」をコンセプトに、レーザーによることづくり・ものづくりの垂直連携・水平連携を推進し、イノベーションエコシステムを確立することにより事業化を促進する「匠(TACMI)コンソーシアム」を運営しており、高効率レーザー加工技術で社会貢献を目指しています。http://www.utripl.u-tokyo.ac.jp/tacmi/index.html

また、事業化の例としては、伊藤/横山研究室で開発された新材料(ポリマー)を、先ほどご紹介した株式会社ASMが事業化することに成功しています。

これからも多くの事例を生み出していきたいと思っています。

 

この秋、東京大学柏キャンパスの一般公開に初めて参加。多くの方にお越しいただき、実際に見ていただきたいです。

―では最後に今後の展開、予定、目標などについて教えてください。

目標は、最初に申し上げたことと重なりますが、柏の葉スマートシティにおける「公民学連携」、大学で言うところの産学官民連携により、世界の課題を解決するイノベーションを起こし、世界に貢献することです。コロナ以降、世の中のニーズ・ウォンツや世界課題も大きく変わりました。私たちの研究・事業のスタイルにも変化が生まれています。こうした状況・環境において、より多様な連携を進め、かつ内容を深めていきたいと思っています。

直近の活動予定として、ぜひこの機会にお伝えしたいのですが、毎年恒例の東京大学柏キャンパスの一般公開に私ども「産学官民連携棟」も初めて参加いたします。今日ご説明した点なども、実際にご覧いただくことでより深くご理解いただけると思います。10/27(金)~28(土)に予定しています。多くの方にご覧いただければ嬉しいです。ぜひお越しください。

[東京大学柏キャンパス一般公開]
https://www.kashiwa.u-tokyo.ac.jp/openhouse/

※研究室、入居企業などはインタビュー時点(2023年9月)の情報となります

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