TOPICS【日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録!NPO法人こんぶくろ池自然の森 インタビュー】「自然と歴史が残る貴重な森を、多くの方に知っていただきたいです。」
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柏の葉キャンパスの駅前からわずか10分ほどの場所に、豊かな自然が残る広大な「こんぶくろ池自然博物公園」があります。柏市から公園管理業務を受託して活動している「NPO法人こんぶくろ池自然の森」の萩原秀夫理事長に、こんぶくろ池自然博物公園の魅力やNPOの活動内容についてうかがいました。聞き手はUDCKタウンマネジメントの金田昂です。
手賀沼唯一の自然水源となっている貴重な湧水を源に、多様で貴重な植物、動物、昆虫が生息しています。
―まず、こんぶくろ池自然博物公園について教えてください。
柏の葉にはこのこんぶくろ池自然博物公園(こんぶくろ池公園)のすぐ近くに県立柏の葉公園があります。こちらは近代的に整備されたいわゆる「都市公園」です。一方こんぶくろ池公園は、昔からある森を出来るだけそのままの形で公園として開放している「自然公園」ということになります。約18.5ha、東京ドームおよそ4個分の敷地に、多様で貴重な植物、動物、昆虫が生息しています。その源は台地上に地下水がしみ出す非常に珍しいタイプの湧水で、園内の「こんぶくろ池」「弁天池」から流れ出す水は最終的に手賀沼に流れ込み、今では手賀沼唯一の自然水源となっています。
開発された都市の、駅から徒歩10分の場所にこのような豊かな自然をそのまま残している森はとてもめずらしく、地域はもちろん社会全体にとって非常に大切な場所です。
―珍しい動植物、とは具体的にどのようなものになるのでしょうか。
たとえばズミという植物。これはリンゴ科で、リンゴのような白い可愛らしい花が咲くのですが、本来は寒いところの植物で日光の戦場ヶ原などで見られます。これがこのエリアにあるのはとても貴重です。湧水の影響で気温が低く地下水位が高いため、ここに生息できるのでしょうね。また、クロツバラ、ヌマガヤといった冷温帯性の湿地性植物も希少で、千葉県のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)に挙げられているものです。
動物では、タヌキやウサギがいます。運が良ければ、散歩中に会うことが出来ますよ。ウサギはすばしっこいからか、なかなか会えないんですけど(笑)。(実際取材中にも園内で運良くタヌキに出会いました!)
また、昆虫については、千葉県昆虫談話会という昆虫好きの方が集まる団体さんに2年間調査いただいたところ、1,786種類もの昆虫が生息していることが分かりました。そのうちの39種類が千葉県のレッドリストに入っている貴重な昆虫です。
そして、そうした動植物を目当てに多くの鳥がやって来ます。オオタカがネズミやハト、サギなどを目当てに狩りにやってきます。またカワセミ、ジョウビタキ、アカゲラといった可愛い鳥も多く来ます。中でもアカゲラは珍しい鳥です。
「持ち込まない・持ち出さない」をルールに、美しい森の姿を守り続けるための活動を続けています。
―こうしてお話を伺うと、本当に貴重な場所で、守っていかなければならないと感じますね。萩原様の活動について教えてください。
NPO法人こんぶくろ池自然の森では、柏市から公園管理業務を受託し、ここをフィールドに様々な活動をしています。現在の会員数はおよそ60名強で、それぞれが無理のない範囲で自主的に活動をしています。活動は大きく分けて3つで、「里山管理」=森の保全・再生。それから「調査活動」これは先ほどの昆虫の調査のような、園内の動植物の種類や状態の調査。そして環境教育などを目的とした「イベント」です。
私たちの活動は昔からの森を出来るだけそのままの状態で残していく、ということが目的ですが、「そのまま残す」ためにこそ、人が多くの手を入れることが必要です。何もしない森は荒れてしまいます。「萌芽更新」と言いますが、歳をとった樹木を伐採し、切り株からの萌芽を育て、雑木林を若返らせていかないと美しい森の姿は保てないのです。また、最近はナラ枯れが全国的に問題になっていて、この東葛地域でも増えています。こんぶくろ池公園でも300本くらいが被害に遭いました。病気になって伐採した木は焼却処分するしかないので、その代わりにドングリから新しい木を育てています。芽が出てから、15~20cmの太さになるのに10年くらいかかります。外から木を持ってきて植えればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、外から持ってきたものは違うDNAを持っており、園内の環境にどのような影響を及ぼすか分かりません。ですので私たちは「持ち込まない・持ち出さない」をルールとして活動しています。
そうそう、ドングリといえば、こうした活動は環境教育などのイベントにもつながっていて、10年くらい前にUDCKと協同したイベントで子どもたちにドングリを植えてもらったのですが、それがだいぶ大きくなって、ようやく木になってきました。とても嬉しく感じています。
実は先般、私たちのこの「市民で育てる百年の森」活動が、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟主催の「プロジェクト未来遺産」に登録されました。https://www.unesco.or.jp/future-project/year-2022/17913/
これを機に、より多くの方に参加いただけるようになることを期待しています。
新しい住民の皆さんに、ご自分の「ふるさと」の風景として感じてもらえたら嬉しいです。
―素敵なお話ですね!萩原様はどういうきっかけでこの活動に参画されたのでしょうか。
私は2007年に柏の葉に引っ越してきました。仕事とは別に大学でランドスケープの勉強をしていたのですが、そこで地域の魅力的な場所を見つけてレポートを書くという課題が出まして。それで色々と調べていく中でこんぶくろ池公園のことを知りました。それまでは駅前以外にはあまり行ったことが無くて関心も薄かったのですけれど、こんな素晴らしい場所があるのかと感動して好きになり、2010年に出来たこのNPOに2011年から参画しています。
―では、最後に皆さまにメッセージを。
繰り返しになりますが、駅から10分の場所にこれだけの貴重な森があることを多くの方に知っていただきたいです。
今日は主に生態系についてお話しましたが、この場所は歴史的にもとても興味深い場所です。6,000年前、縄文時代はこの周辺は海で、このあたりがギリギリ陸地でした。そのため、氷河期の生き残りとでも言うべき植物が奇跡的に生き永らえています。
また江戸時代には、このあたりは江戸幕府直轄の牧(馬を放し飼いにする場所)でした。馬が逃げないようにする野馬土手が築かれていたのですが、その姿を今でも見ることが出来ます。
戦争中はこのエリアは陸軍の飛行場となり、燃料庫や、飛行機を隠す「掩体壕」がつくられました。多くの掩体壕はコンクリートなどで飛行機を覆う施設ですが、ここでつくられたのは飛行機の周囲の地面を高く盛っただけの「無蓋掩体壕」で、79基つくられたそうです。このうち1基を園内で保存、公開しています。
それから、皆さんご存じのように1号近隣公園エリアは近年はゴルフ場でしたので、園内にカート道が残っていたり、以前はゴルフボールを見つけたりもしましたよ(笑)
このように、こんぶくろ池公園は、その豊かな自然とともに地域の歴史も感じていただける場所です。柏の葉はマンション・住宅がどんどん出来て、新しい住民さん、子どもたちが多くいらっしゃいます。そういう皆さまにご自分の「ふるさと」の風景として感じてもらえたら嬉しいです。
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