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TOPICS「何かを規制するのではなく、ビジョンを共有することで脱炭素を実現したい。」柏の葉スマートシティにおける脱炭素実現への取組み

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  • 柏の葉アーバンデザインセンター[UDCK]
  • 柏市
  • UDCK
  • 三井不動産株式会社

気候変動による悪影響を食い止めるため、脱炭素=二酸化炭素の大気への排出量を実質ゼロにするための活動が世界中で進められています。柏の葉スマートシティにおいても、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)内に新たに脱炭素部会を設け、その取り組みを加速していくことになりました。
柏の葉における脱炭素への取り組みのこれまでとこれからについて、UDCKディレクターで柏市都市部北部整備課の阿藤秀夫さんと、三井不動産柏の葉街づくり推進部の齊藤千紗さんにうかがいました。

柏の葉に集まる人や企業の活動や成長を阻むことなく脱炭素を実現する。そして、それをモデル化して世界に発信する。これが私たちの大きな挑戦です。

―柏の葉では、街づくりを始めた当初から電力利用の最適化に注力してきました。まずはその経緯を教えてください。

阿藤さん:そもそものお話になりますが、街づくりの概念として「スマートシティ」が登場する前提として、2000年代初頭に「スマートグリッド」という新たな仕組みの提唱がありました。スマートグリッドは日本語では「次世代送電網」と言い、最新のIT技術を活用して使用電力量を最適化する電力供給システムのことです。このスマートグリッドを中心に街全体でエネルギーマネジメントを行う都市のことを「スマートシティ」と呼ぼう、というのが「スマートシティ」初期の姿でした。少し乱暴に言えば、「スマートシティ=スマートグリッドによる電力利用最適化の街」だったのです。

柏の葉においても、2006年の街びらき当初から「環境共生」を「健康長寿」「新産業創造」と並ぶ主要テーマの1つとし、積極的に取り組んできました。太陽光発電などの自然エネルギー活用、大規模蓄電池、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム:家庭で使うエネルギーの管理システム)等の導入や、それらを繋ぎ、街区間をまたいで電力利用を最適化するAEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)などです。

こうした活動はもちろん今も進化を続けていますが、「スマートシティ」の概念や目的が多様化するにつれて、柏の葉の活動も多岐にわたるようになり、エネルギー関連の取り組みが相対的に目立たないようになっていたかもしれないですね。
一方で皆さまご存じの通り、二酸化炭素排出による温暖化を原因とした異常気象や生態系の変化などの被害は年々増えており、この数年、世界中で脱炭素への取り組みが今まで以上に本格化しています。実際の被害を目の当たりにして、いよいよ本気で取り組まないと間に合わない、人類の英知を結集してなんとか解決しよう、という状況です。
UDCKにおいても従来から一歩も二歩も踏み込み、「脱炭素=二酸化炭素の排出ゼロ」へ向けた活動をしていこうと、このたび、脱炭素部会を設置しました。今後の活動に向けて日々議論を重ねているところです。

―脱炭素部会では、どのようなことが議論されているのでしょうか。

齊藤さん:日本では、2050年にカーボンニュートラルを実現することを目指し、2030年度の二酸化炭素排出量を2013年度の半分にするという国としての目標を掲げています。また、柏市は令和4年、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を表明しました。
そのような流れを踏まえ、昨年からUDCKに脱炭素部会を立ち上げ、脱炭素化に向けた対応策を検討しています。

柏の葉は日々発展を続けており、今後も住民・働く人や企業が増えていくことが見込まれています。人や建物が増えれば当然、エネルギー使用量は増えます。経済や生活における活動を制限すれば二酸化炭素の排出量を減らせるかもしれませんが、それでは意味がありません。柏の葉に集まる人や企業の活動や成長を阻むことなく脱炭素を実現する。これが私たちの大きな挑戦です。
現在、具体的な二酸化炭素削減目標設定に向け、脱炭素部会で検討を重ねていますが、目標の設定に向けた推計・試算を進める中でわかってきたのは、企業だけでなく住民の行動が伴わなければ目標を達成できない、ということです。公民学一体となり脱炭素に向けた取り組みを進めていくことが必要となります。そこで、柏の葉に住む人、働く人、企業、団体、施設、それぞれがビジョンを共有し目標達成に向かえるようなアクションプランを将来的に策定する予定です。

また、「世界の未来像を作る街」として、世界に先駆けて脱炭素を実現し、そのモデルを世界に発信していきたいと考えています。R&D(研究開発)拠点である柏の葉の特長を活かし、「省エネ・創エネ・蓄エネ・エネマネ」に関わる新たな技術の開発・実証・実装を進め、柏の葉スマートシティ発で脱炭素のイノベーションを起こすことを目指します。

住民の皆さまがそれぞれ意識して自分が出来る範囲での活動をする、そのためのきっかけ創りをしたいと考えています。

―先日「柏の葉エコWEEKEND」というイベントが開催されました。これも住民の皆さんと一緒に脱炭素を目指す活動の一環ということでしょうか。

阿藤さん:はい、まさにそういうことです。柏市ではコロナ禍以前から「かしわ環境フェスタ」という名前で同様のイベントを開催していたのですが、これが進化して復活した、というようなかたちになります。柏市環境政策課とUDCKの主催で、柏の葉内外の企業・団体のご協力をいただき、昨年の12月16日に開催しました。
「聞く」「見る」「体験する」の3つのカテゴリで、東京大学、ららぽーと柏の葉、ゲートスクエアプラザなどで様々なプログラム・イベントが行われ、延べで1,000名ほどのご参加をいただきました。

「聞く」の脱炭素フォーラムにおいては、柏の葉の脱炭素まちづくり戦略の進捗報告に始まり、千葉大学倉阪先生による基調講演、柏の葉の住民共創プログラム「みんなのまちづくりスタジオ(deco活編)」のアイデア発表会、柏市と三井不動産の環境まちづくりの取り組み紹介、パネルディスカッションにより、地球規模からローカルなものまで、環境に対して学びの深いものとなりました。
また、「見る」においては、EV車両の展示、ごみアート作品の展示、植物工場の見学、「体験する」においては、太陽光や空気などの自然エネルギーの活用から、藻類や枝葉などの生物の活用、リユースやリサイクルといった資源の活用など、様々な切り口から環境のことを楽しく学べるものとなりました。
UDCKのウェブサイトで詳しくレポートしていますので、ぜひご覧ください。
https://www.udck.jp/reports/wuVYxYQC

脱炭素は、国や企業単位で取り組んでいかなければならない「大きな話」です。なので、ともすると一人ひとりの日常とは関係がないように思いがちですが、先ほどもお話した通り、計算上も住民の皆さまが一緒に行動しないと脱炭素は実現できません。最後は1人ひとり、自分の話なんですね。ですので、街全体としてしっかりとした戦略を創りながら、住民の皆さまがそれぞれ自分が出来る範囲での活動をする、そのためのきっかけ創りをしたいと考えています。とくに、柏の葉には子育て世代のファミリーが多いので、子どもが楽しめる、親子で楽しめるコンテンツを増やしていければと思います。アカデミアから大企業、スタートアップまで多様なプレイヤーにご協力いただける柏の葉ならではの強みを活かして、今後もこうしたイベントを継続していければいいですね。

柏の葉を、「住んでいると自然に脱炭素に向かっていける街」にしていきたいと思っています。

―では、今後の活動に向け、メッセージをお願いします。

齊藤さん:県や市などの行政単位ではなく、エリア単位で目標設定して脱炭素に取り組んでいるのは日本でも珍しい事例かもしれません。世界の課題を解決する先進都市としての柏の葉ならではの取り組みだと思います。
今後は、街全体の目標設定を踏まえ年度内に主体ごとのKPIを設定できればと考えています。ただ、これが数値の押しつけになってしまっては実現出来ませんので、それぞれの主体が自発的に考えて取り組んでいけるような仕掛け、仕組みが重要ですね。

阿藤さん:何かを規制したり強制したりするのではなく、ビジョンを共有して、みんなで一緒に同じ方向へ進むことで脱炭素を実現したいと考えています。そのために、現在の二酸化炭素排出量を見える化するとともに、排出量を下げるための方法論や事例を選択肢として提示するなど、行動が変容するきっかけ創りをしていきたい。柏の葉では「住むだけで自然に健康になる街」を目指していますが、同じように「住んでいると自然に脱炭素に向かっていける街」になればと思います。皆さんで一緒に進んでいきましょう!

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