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TOPICS【柏の葉ゲノムクリニック インタビュー】 「ゲノム医療という新領域の医学により、多くの方々の健康に貢献したい」

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  • KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)
  • アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)
  • 東葛テクノプラザ

2017年のアジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)で柏の葉賞を受賞し、現在は柏の葉オープンイノベーションラボ(KOIL)と東葛テクノプラザを拠点に活動をしている株式会社ゲノムクリニック。同社の診療所「柏の葉ゲノムクリニック」が、この2月より『がんリキッドバイオプシー外来』を開設しました。
同社の活動内容やこの新しい外来の内容について、代表取締役の曽根原弘樹様にうかがいました。聞き手はUDCKタウンマネジメントの小林悟です。

「知ることで、救える命を増やす」。個人のDNAを解析することで、がんの発症リスク判定や初期段階での発見などに役立てています。

―まず御社の事業内容について教えてください。

当社は千葉大学の研究成果活用型ベンチャーです。2017年に千葉大学医学部発の研究プロジェクトとして発足し、2018年4月に株式会社ゲノムクリニックとして法人化しました。2019年10月に実際に医療を行う診療所として柏の葉ゲノムクリニックを開業しています。
「知ることで、救える命を増やす」をスローガンに、個人ゲノム(DNAの配列)を解析し、一般の方がご自身の健康に活かす「ゲノム医療」を提供しています。かつて数億円の費用がかかっていたゲノム解析ですが、今では1人あたりのコストは数十万円程度に下がっています。その結果、個人ゲノムを解析し一般の方がご自身の健康に活かす「ゲノム医療」の実現が現実的になりました。DNAは、身体の設計図・青写真のようなものです。これを読んでそれを意味付けすることで、病気の予防や早期発見などに繋げていくことが出来ます。
当院ではとくにがんと生殖を2つの柱にしています。実は人間は生きているだけでDNAに傷がつくことがあります。自然に細胞が分裂するだけでエラーが出るのですね。その中で、増殖とか分化などの重要なところに傷がつくと、がんになる。ゲノム解析により、そのリスクを判定したり、あるいは初期段階で見つけたりすることが出来ます。また生殖分野では、胚培養液中Cell Free DNA解析を「Medi Seq(メディ・シーク)」と名付けて提供し、体外授精における着床前診断や着床率向上に活かしています。

―既存の遺伝子検査サービスとの違いはどのような点にあるのでしょうか。

一言で言うと「より医療寄り」です。多くの消費者むけ遺伝子検査では、個人間によくある遺伝子配列の違いを表面的に見ています。言わば「個性」の範囲を見ているだけなので、疾病を予測する精度もまだまだ低いのです。一方、当院が行っている検査では、次世代シーケンサーと呼ばれる専門的な機器により遺伝子全体の配列を読み解きますので、病気に直結する特徴的な変化を見つけることが出来ます。

体に大きな負担がない、採血によるがん検査を実現。これによりがんの状態や将来リスクがわかり、治療方針に繋げることが出来ます。

―今回あらたに始められた「がんリキッドバイオプシー外来」とはどのようなものでしょうか。

がんが体内で大きくなってくると、その一部が元の場所から血管内にこぼれ落ち、全身を巡ることが分かっています。「がんリキッドバイオプシー」は、がんに由来するDNA/RNAや細胞を血液などの体液中から取り出して分析することにより、がんの早期発見やモニタリング、治療方針提示を行う検査です。一般にがんの検査はなかなか大変です。生検(生体組織検査)、内視鏡検査、CT、MRIなど、時間もコストもかかり、体への負担も小さくない。それに対し、採血だけで体に大きな負担がなく検査を行うことが出来るのが特長です。
こうした血液による検査は国内外に多くあるのですが、玉石混交というのが実態です。しかし一般の方にはその良し悪しは分からないですよね。私たちは医者としての立場で信頼できると判断した検査を国内外から集め、自社ラボでの解析とあわせてパッケージ化してご提供いたします。これにより、将来のリスクもわかりますし、すでに罹患されている方の現在のがんの状態も分かり治療方針に繋げることが可能です。再発の予兆も知ることが出来ます。
私たちは医療機関ですので、まず最初に問診を行い、最適な検査をご提案いたします。そして、その結果に応じて、追加の検査や医療機関のご紹介など、既存のがん検診や標準治療との併用も含め、お一人おひとりに最適な選択肢をご提案いたします。
くわしくはウェブサイトをぜひご確認ください。
https://www.genome-clinic.com/がんリキッドバイオプシー外来/

―従来の検査で見つけにくかったがんの発見に繋がる、というようなこともあるのでしょうか。

そうですね。例えば大腸がんは従来は内視鏡検査で見つけるしかなかったのですが、これが血液検査で分かるようになってきました。また、乳癌は血液マーカーが無かったのですが、最近、結構な確率で血液からわかるようになっています。少しずつ、確実に進歩しています。
ですので、この検査を多くの方々に受診していただくことで、がんを早期に発見し、予後を改善することが出来ればと考えています!

柏の葉はコンパクトなエリアにアカデミア・ビジネスプレイヤー・住民が集まっていて、ベンチャーにとって良い環境だと感じています。

―御社は長く柏の葉で活動されています。そのご縁は2017年のアジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)からでしょうか?

そうなんですが、実はその前に東京大学大学院で柏の葉のキャンパスにいた時期があるんです。少しややこしいのですが整理すると(笑)、私は筑波大卒で、そのあと東大大学院に進み、さらに千葉大医学部へ行きました。ですので、2017年にAEAで柏の葉に来た時は、懐かしい街に来たというカタチだったんです。

―そうなんですね!柏の葉にご縁のある3つの大学すべてで研究されてきたんですね。

そういうことになりますね。そして、2017年のAEAで柏の葉賞をいただき、無料でKOILが利用できるようになり、本格的に柏の葉に戻ってきました。まだ家賃の支払いも簡単ではない状況でしたので、ありがたかったです。また、柏の葉賞ということで街ぐるみで事業成長をサポートいただき、KOIL内に診療所を開設したり、ウェットラボも必要ということで東葛テクノプラザを紹介してもらうなどしました。以来、東葛テクノプラザにラボを、KOILに診療所を持って活動しています。

―柏の葉についてどのような印象をお持ちですか?

5km圏内くらいの範囲にアセットがぎゅっと詰まっていて、公民学がコンパクトにまとまって活動している。アカデミア・ビジネスプレイヤー・住民が集まっていて、ベンチャーにとって良い環境だと感じています。こうした場所は首都圏でも2~3しかないのではないでしょうか。なかでも私たちは研究機関ではなく医療機関ですから、患者さんが近くにいらっしゃることや、国立がんセンターなどの医療機関が多くあることは大きなポイントですね。

ゲノム医療は、まだ始まったばかりで課題も多い新領域の医学。真摯に取り組んでいきます。

―では最後に、今後柏の葉に期待することや、御社の今後の展望についてお聞かせください。

柏の葉については、医療系のベンチャー/スタートアップのHUBや拠点としての機能をより強くしていただければ嬉しいです。このエリアには医療機関や研究施設も多いので、個人的な知り合いは多くて、先日も駅前のテニススクールで知り合った方が偶然、医師や研究者の先生だったりしたんですが(笑)、定期的な集まりは無いんですよね。期待しています。

当院に関しては、「がんリキッドバイオプシー外来」や、今日は詳しくは触れませんでしたが、従来から提供している乳がん・卵巣がん遺伝子リスク判定「BRCA Seq(ブラカ・シーク)」(現在は全遺伝子解析に発展)など、ゲノム解析による検査をより多くの医療機関に広めていきたいと思っています。そのことにより、より多くの方のがん発症リスクを減らす、あるいは早期発見による効果的な治療につなげていきたいです。
また、「Medi Seq(メディ・シーク)」はすでに多くの不妊治療クリニックに採用いただいていますが、これもさらに多くのクリニックに採用いただき、母子ともに健康で幸せな出産を増やしていければ嬉しいです。

ゲノム医療はまだ始まったばかりの分野で、大きな可能性と同時に課題もあります。また人のゲノム情報はとても重い意味を持つ情報であり、社会的・倫理的価値観を意識することも重要です。ゲノム医療という新領域の医学に真摯に取り組み、多くの方々の健康に貢献することを第一に考え、進んでいきたいと考えています。

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