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TOPICS【クロサカタツヤ様 インタビュー】「街の価値が上がるということは、生活している皆さん自身の価値が上がるということ。柏の葉は、そういうかたちに持っていけるポテンシャルがありますね。」

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柏の葉には、生活者が同意したパーソナルデータを利活用できる未来を目指して構築された「柏の葉データプラットフォーム」があります。多くの皆さまの個人的なデータを取り扱う上で、その管理や利用方法には最大限の慎重さが求められることは言うまでもありません。そのために、柏の葉データプラットフォームでは「データ倫理審査会」という第三者機関を設け、個人情報の取り扱いが「個人情報保護法」などの関連法令やガイドラインおよび柏の葉におけるデータ利活用の指針となる「柏の葉データ利用倫理原則」などを遵守したうえで適切に運営されていることを審議し、必要に応じて助言をしていただいています。
このデータ倫理審査会のメンバーである、株式会社 企(くわだて) 代表取締役/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授のクロサカタツヤ様にお話をうかがいました。聞き手はUDCKタウンマネジメントの小林悟です。

データビジネスにおいては、ユーザーの要望と企業の要望が調和することが重要だと考えています。

―いつもお世話になっております。まず、クロサカ様のご本業と言いますか、普段の業務について教えて下さい。

16年ほど前に設立した株式会社 企は、一言で言えば、通信事業者・放送事業者・データビジネスを支援するコンサルティングファームです。社員は10名ほどで、カッコよく「ブティック型」と呼ばれますが、要は小さな寄合所帯ですね(笑)。
たとえば通信事業者に対しては、インフラ構築など設備投資の計画や、事業上のエコシステムの構築=B to Bマーケティングのお手伝いを、また放送事業者には、放送局のデジタル化、配信ビジネス参入などの計画や戦略の立案をしています。
そして、柏の葉でお手伝いしている内容と重なる業務領域が、データビジネスへのコンサルティングです。企業はなるべくたくさんのデータを制限なく使いたい。一方でユーザーは自分のデータを適正に扱って欲しい。いわゆるデータプライバシー、データ保護ですね。この点において、ユーザーの要望と企業の要望を擦り合わせるのが私の仕事です。ユーザーのデータは一切使うな、となると便利な生活が出来なくなりますし、企業が好きなようにあらゆるデータを取って使えるような街では、ちょっと暮らしていけない。ですので私は、どちらか一方の立場だけを守るのではなく、両者が調和することが重要だと考えています。そのために、どこが目指すべきゴールなのか、均衡点はどこか、何を守るのかを見定め、必要であれば別の専門家…たとえば技術上の課題であればエンジニア、法律の問題であれば弁護士、国の仕組みが関わるのであれば政府など、必要な人たちと連携して、物事が前に進むようにしています。

―通信や放送のインフラ整備とデータビジネスとは、あまり関連性のないお仕事のようにも思えるのですが。

そうですよね、でも根っこは同じだと思っています。
これまでは、企業は消費者に「いかに売るか」だけを考えていれば良かったんですね。いわば「キレイな押し売り」をしていれば良かった。しかし、デジタルの時代になり、エンドユーザーの発言力・意思決定力が大きくなりました。今は消費者側が動ける・動かす時代ですので、企業から消費者に一方的に売るだけのやり方はもはや通用しません。企業はステークホルダー全員のことを考える必要があります。
たとえば通信の世界では、通信規格のメジャーアップデートの瞬間が重要です。4Gが5Gになる、というヤツですね。これをやり方を間違えると1兆円、2兆円という単位で売上がすぐに吹き飛んでしまうのです。通信規格の変更をユーザーがどう受け止め、どう振舞うかによって結果が大きく変わってきます。ですので、一方的に進めるのではなく、エンドユーザーを始めとするステークホルダーと協調して進めていかなければなりません。扱っているモノは違っても、考え方は同じなんです。

オープンデータ活用は、ブレーキとアクセルのバランスを適切にとることが重要。柏の葉はとてもうまくやれているのではないでしょうか。

―なるほど、ありがとうございます。そうしたお仕事を拝見してデータ倫理審査会のメンバーに加わっていただいたわけですが、これまでの活動について、どうご評価されていますか。

私が言うと自画自賛になってしまうのかもしれませんが、思い切って言ってしまうと、これまで日本に前例のない素晴らしい取り組みになっていると思います。
データに限らず倫理の審査というのは、医療などの生命科学の世界から来ていることが多いんですね。なので、どうしても「止めること」を目的にして、ブレーキのことばかりを考えてしまうケースが多いんです。ですので、実はこの会に参加するときに私は、「アクセルとブレーキ、両方重要です。両方やりましょう」と、早い段階でメッセージしようと思っていました。ところが始まってみると、私がそんなことを言うまでもなく、メンバーのみなさんがブレーキのことだけをやるつもりなんか無かった(笑)。理想の未来に向かって、踏むべきアクセルは踏む。その上で、「でもこれは危ないから、丁寧に慎重にやろうね」と。そのバランスがとても適切だと思います。ですので、街の皆さまにも一定程度ご理解いただけているのではないでしょうか。そしてその成果が色々なところに出ている、あるべき姿に近づいていると思います。もちろんほかの街でも同様の取り組みがあるのですが、私が知る限り、ここまでバランス感をもってやれているケースはあまり無いのではないでしょうか。

テクノロジーや新しいソリューションがどのように溶け込んでいって、街の価値をさらに上げてくのか、ということに強い関心を持っています

―そうおっしゃっていただけると嬉しいです。クロサカさんは、柏の葉の取り組み全体についてはどう捉えていらっしゃいますか。

街というのは、通信サービスやデジタルテクノロジーと社会との重要な結節点です。ですので、最先端のスマートシティの取り組みは私の関心事であり、柏の葉のことも以前から知っていました。
いま現在の、柏の葉への興味のポイントは二点です。
まず「それで儲かるのかどうか」という点です。立場上、私は世の中に「キレイゴト」を言うこともありますが、やはりビジネスコンサルタントですので、それで経済や産業がどういう風に発展するのか、端的に言えば「それって儲かるんですか?」というのが最終的な興味としてあります。今、様々な要因で柏の葉全体の資産価値が上がっていると思います。この価値が上がっていくサイクルの中に、どのようにテクノロジーや新しいソリューションが溶け込んでいって、その価値をさらに上げてくのか、ということに強い関心を持っています。住民の皆さんにとっては、街の価値が上がる、イコール、マンションの価格が上がるということ、と思われるかもしれないですが、それだけではなく、生活しているあなた自身の価値が上がる、街のみんなのアセットが上がるということです。柏の葉は、そういうかたちに持っていけるポテンシャルがありますね。
それからもうひとつ、柏の葉でのこうした取り組みを外の世界に広めていく、広げていくこともとても大切です。私自身も色々なところで機会があれば柏の葉のことをご紹介しているのですが、柏の葉の日々の営みの面白さ、価値を外の人たちに伝えていくアウトリーチ活動が、これからはより重要になってくると思います。

―最近、柏の葉のアセットやコミュニティをパッケージ化して、大手企業の商品・サービス開発やマーケティングをサポートするという取り組みを始めています。オンラインだけではなくリアルの世界も含めた企業と街との共創ということですが、こうした取り組みについてはどう思われますか。

デジタルの世界では「リビングラボ」という取り組みがあります。実際の街の中に新しいテクノロジーやサービスを持ち出し、使う人と作る人が一体になって、生活しながら技術を磨くというもので、今では世界中の街で多くの取り組みが行われています。柏の葉でも「みんなの街づくりスタジオ」として行われていますよね。日常感覚で評価してもらうというのは非常に重要なアプローチです。そして、こうした取り組みにおいても、データ活用と同じことが言えると思います。特に街という単位では、小さなお子様や情報機器が苦手な方など、多様な人々が関わるので、思いもよらぬトラブルも起こり得ます。でも、だからといって「ほら、言っただろう、やめておけ」と規制してしまうと、何も出来なくなってしまう。ですので、起こりうることを出来るだけていねいに正確に想定して議論して、対策しておくこと。止めるのではなく、理解していただく方法、受け入れていただける方法を考えることが重要です。また、それでもトラブルが起こってしまったときに、その救済方法を考えておく、救済の回路をつくっておくことも重要だと思います。トラブルにあった方を、確実に「出来るだけ良い状態」にする。その方が「そこまでしなくて結構です」というくらいに、しっかりと守ってあげられるかどうか。それが、こうした取り組みを継続・拡大していくための要点だと思います。

―貴重なアドバイス、ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします!

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