TOPICS【街を超えた共創事例】柏の葉で開発・運用されているパーソナルデータ連携基盤「Dot to Dot」とヘルスケア関連サービス「スマートライフパス」を、神戸市が採用
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- 柏の葉データプラットフォーム
- 神戸市
- 三井不動産株式会社
- BIPROGY株式会社
データ連携基盤を自治体ごとに開発・運用するモデルには限界があると考えています。柏の葉との共創により、多くのメリットを得ることが出来ました。
―まず、「神戸スマートシティ」のこれまでの取り組みについて教えてください。
西野様:神戸市では、「デジタルで、神戸をもっと暮らしやすく。スマートシティで叶えよう。やさしさも、便利さも。」と謳い、「神戸スマートシティ」として、DXを推進しています。サービス領域は、健康・医療、教育・文化、地域社会、産業・経済、防犯・防災、環境・エネルギー、インフラ・施設と、多岐に及びます。
おかげさまで神戸スマートシティの取り組みは、すでに多くの成果を生んでいます。総務省が主催する「Data StaRt Award」(地方公共団体によるデータ利活用表彰)では、2021年にヘルスケアデータ連携システムが統計局長賞を、2022年に「神戸データラウンジ」が総務大臣賞を、そして2023年に「EBPMで創る人口戦略」が特別賞を受賞しました。
―すでにとても幅広い領域で多くの取り組みがなされ、成果もあげていらっしゃる神戸市さんが、今回なぜ柏の葉と共創することになったのでしょうか。
西野様:はい。これまで活動を進めてくる中で、いくつか大きな気付きを得ることが出来たのですが、その中の1つに「自前主義の限界」があります。
実は神戸市は2022年にデータ連携基盤の運用を開始したのですが、当初構想したサービスを実現することが出来ず、利用者数も低迷し、機能を停止したという経験があるのです。
いま、国内の多くの自治体がスマートシティやDXに取り組んでいて、それぞれの自治体が独自に仕組みを構築し、サービス展開しています。しかし、開発や運用のコスト、さらにパーソナルデータの取り扱いに関する規約の整備などでの負担は小さくなく、人口減少社会においてリソースの確保が難しい中、各自治体が自前ですべてをまかなう「自前主義」では実効性のある高質なサービスの開発・運用は難しいというのが私たちの結論です。
ところで、デジタル技術のメリットの1つは、物理的距離の離れた相手とも手軽に繋がることが出来る点にあります。自治体間の連携というと従来は近隣の自治体の間で行われるものだったのですが、デジタル化が進んだ現在では、地理的に遠い自治体とも連携を検討することが出来る。そこで国内外の幅広い事例を調査検討し、柏の葉の「スマートライフパス」に出会うことが出来ました。
―「スマートライフパス」のどういった点をご評価いただいたのでしょうか。
伊藤様:自前でのサービス開発の際に感じた課題感のひとつに、サービスの乱立によるユーザーの利便性の低下という点がありました。現在、パーソナルデータを取り扱うサービスは数多く存在し、サービスごとのユーザー登録やID・パスワードの管理などユーザー側の負担が大きく、それが利用者数や利用頻度の低迷に繋がっていると感じていたのです。
その点、スマートライフパスはDot to Dotというデータ連携基盤の上に設計されているので、ユーザーはシームレスに複数のサービスを利用することが出来ます。もちろんパーソナルデータは利用者の同意がないと連携されませんので安心です。
西野様:俯瞰してあらためて整理すると、柏の葉のデータ連携基盤の共同利用という今回のスキームには、3つのメリットがあると考えています。
1つは、費用の低減。構築コストがかかりませんし、運用費は按分できます。
2つ目に、データ連携基盤の上で動く各サービスはすでに柏の葉で実績のあるサービスを利用するだけで良く、開発が不要である点。
そして3つ目が、神戸市独自のサービスを追加することも容易である、という点です。
この3点が、私たちにとって、とても魅力的でした。
異例のスピードで実証事業が実現。アンケート調査とサービス利用状況の分析により、今後のスマートシティ開発に繋がる多くの知見を得ました。
―では、今回の事業内容について、具体的に教えてください。
岡様:神戸市では、マイナンバーカードを活用した健康増進サポート事業支援業務として、20-40代の女性100名を対象に、「KOBE sports & Well-being City Project」(以下『KOBEプロジェクト』)を運営しています。女性の20~40代は他の世代と比べて運動実施率が低い一方、月経や出産、更年期など女性特有の健康課題やライフステージの変化における体調不良に直面しやすい年代です。KOBEプロジェクトは、そうした世代の皆さんに運動を通してココロとカラダを整えるきっかけ作りを提案し、検証するものです。
今回、2024年1月26日から3月31日までの間、この「KOBEプロジェクト」参加者 100 名を対象に、「スマートライフパス」と「Dot to Dot」を共同利用する形でサービスを提供し、運動習慣の変化を確認しました。
具体的には、KOBEプロジェクトで活用している「ASICS WELLNESS CONSULTANT」に加え、「スマートライフパス」のサービスである「カロママ プラス」、(パーソナルAIコーチが健康アドバイスを提供するアプリ)「Beatfit」(パーソナルフィットネスアプリ)、「Health Data Bank」(バイタルデータ管理サービス)、「KIDSLINE」(ベビーシッター・家事代行サービス)をご提供。参加者はご自身の健康データを一元管理・追跡することが可能となり、食事や運動のデータが連携されることで具体的な健康サポートを受けることが出来ます。そして、体内・体力測定のビフォーアフターを比較し、健康増進意欲向上のためにココロとカラダを整えるきっかけ作りを提案し、検証しました。
伊藤様:ひとつお伝えしておきたいのが、KOBEスマートシティ推進コンソーシアムに加盟するアシックス、三井不動産、BIPROGYの各社が主体的に参加、共創をすることで、わずか2か月間という準備期間で実証事業が実現したということです。これは産官連携事業としては異例と言えるスピードでした。
―この実証事業ではどのようなことが分かったのでしょうか。
伊藤様:参加者へのアンケート調査と提携サービス利用状況を分析したところ、複数のウェルネスサービスの利用機会と利用サポートの提供は、利用者の運動習慣の継続化に役立てられる、ということがわかりました。また、参加者および提供者の両方の視点において、共同利用に起因する課題は特に見受けられませんでした。
岡様:具体的に申し上げると、まず、利用前と利用後を比較したところ、参加者の16%で運動量が増えました。これは、柏の葉と共同のサービスセットを使うことで、初期設定の負担を軽減するとともに複数のサービスを素早く使える環境を提供できたのが大きかったと思います。利用状況を元に、人気ランキングの提示やメールによる利用促進を実施することで、参加者が主体的に運動を行うきっかけにつながりました。アンケートからも、スマートライフパスによるアプリの種類追加や定期的なお知らせが、運動を行うきっかけになったことが確認できました。
また、参加者の行動変容が確認できました。アンケートでは、提携サービスから提供される健康スコアやアドバイス、自分にあったフィットネスコンテンツにより、「やる気が出た」という意見が多数を占めました。また積極的な利用者は一日に複数回提携サービスを利用しており、提携サービスが運動習慣化のきっかけになったことがうかがえました。「Dot to Dot」を介して提供される疾病リスク予測でも、参加者の行動変容が確認できました。
そして、運動習慣をサポートしてくれる、というようなメリットが明瞭であれば、参加者は個人データの第三者提供に抵抗が少ないことも確認できました。こうしたパーソナルデータの活用については一般に抵抗感を持つ方が少なくないですが、本事業では半数以上の参加者が個人データの提供に同意した上で利用を継続しました。さらにアンケートでは、個人データの第三者提供に関して、8割近くが「新しい体験ができるなど、自分にメリットがあるなら提供する」と回答し、提供するメリットが明瞭であればデータ提供に前向きな様子が確認できました。
伊藤様:もちろん、データの第三者提供には個人情報保護法などの法令に準拠していることが求められますし、自分で選んだデータのみ提供したいなどの慎重な意見もありました。個人データの利活用には丁寧な対応が求められていることも、あらためて把握できました。
優れたサービスやデータ連携の仕組みを、地域の枠を超えて日本全国で相互に使い合える世界を創りたい。それは必ず、生活者の豊かな暮らしに繋がっていきます。
―大きな成果に繋がり、素晴らしいですね!今回の実証を踏まえた具体的な事業の計画などはあるのでしょうか。
伊藤様:今月から、「子育て支援スタンプラリー」という新しいプログラムが走り出しています。これはUDCKタウンマネジメントさんの事業を神戸市が後援するというスキームで実施されています。神戸市と柏の葉スマートシティの連携がまたひとつ深化したものになりますね。
岡様:2024年8月1日から9月30日の期間中、神戸市内で子育てをしている方が「スマートライフパス」に登録の上、アプリ内で友だちを登録したり、対象施設に行ったり、イベントに参加したり、対象アプリを使うとポイントが貯まり、そのポイントは2024年11月開業の『三井アウトレットパーク マリンピア神戸』でご利用可能です。多くの方にご参加いただきたいと思っています。
伊藤様:この事業の進捗状況や成果を、今後のさらなる展開へ活かしていきます。
―では最後に、今後の展望などについてお聞かせください。
西野様:今後も、神戸市、アシックス、三井不動産、BIPROGY、UDCKタウンマネジメントの協力体制を継続し、今回の結果を参考に、市民の健康増進に向けた継続事業を検討していきたいと思っています。
さらに、神戸市と柏の葉スマートシティとの連携にとどまらず、共同利用に関心のある他の自治体との連携へと拡げていきたいですね。優れたサービスやデータ連携の仕組みを、地域の枠を超えて日本全国で相互に使い合える世界を創りたい。それは必ず、生活者の豊かな暮らしに繋がっていきます。そういう世界をつくることに貢献できれば嬉しいです!
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