【ハツメイノハ2023優勝者 石橋健次さんインタビュー】「柏の葉でなら、住民の皆さんと一緒にテストしてデータを取っていける。この環境でなら、やりたいことができるのではないかと思っています。」
TOPICS【共創事例:柏市×災害モンスター研究所】「新しいコト、やったことが無いことはNGとなることが多いんですが、柏では『それは日本初ですね!ぜひやりましょう!』となるんです。」
SCROLL
- 柏市
- UDCK
災害大国、日本。常日頃の備えはとても大切です。とはいえ、防災訓練に参加したり、非常持ち出し袋をきちんと整えたりなど、ついつい怠りがちではないでしょうか。柏市でも毎年、総合防災訓練を行っていますが、参加者数が伸びないのが課題でした。
そんな中、今年の総合防災訓練では、柏の葉のビジネスプランコンテスト「ハツメイノハ」で優勝した「災害モンスター研究所」とコラボレーションすることにより、大幅に参加者数を増やすことが出来たそうです。
柏市危機管理部防災安全課の片上泰輔さんと、災害モンスター研究所の石橋健次さんにお話をうかがいました。
災害は常に私たちの目の前にあるリスクなのに、防災訓練に参加する人は驚くほど少ないんです。これは国家の危機です!
―まず、今回共創に取り組むことになったきっかけを教えてください。
片上さん:わたしは昨年度まで柏市市役所から柏市消防局へ出向していたんです。消防職員だった今年の1月、UDCKの糸島さんからご依頼いただいて「Kサロン」(UDCKが主催する街の交流イベント)で石橋さんとご一緒に登壇することになりました。石橋さんが、「ハツメイノハ」で優勝した事業である、ゲーム感覚で楽しめる新しい防災のとりくみ「災害モンスター探検隊」をご紹介され、私が、日常に取り入れられる家庭での防災アクションや、消防士のふだんの仕事についてご説明しました。ですので、私たちを最初に繋いでくださったのはUDCKの糸島さんということになります。街の仕組みが機能しているな、とあらためて実感します。
4月に今の部署に異動して総合防災訓練の計画を聞いたとき、参加者を集めるには何か新しい魅力が必要だと思ったんです。そのときに石橋さんのことが頭に浮かんで、すぐにお声がけさせていただきました。
―具体的に、どういう点を解決したかったのでしょうか。
片上さん:これは柏市に限らず全国どの自治体でも同じなのですが、防災訓練の参加者を増やすことは、大きな課題です。とくに子育て世代にはなかなかご参加いただけない。そこで、警察や自衛隊、消防などの車両を展示するなどして少しでも興味を持っていただけるようにはしているのですが、それだけではなかなか難しいのが実態です。どこも似たようなことをやっていて、目新しさもありません。また、総合防災訓練には防災関係機関が多くのブースを出しているのですが、このブースの回遊性を上げることも課題でした。なによりも、楽しみながら学ぶ防災訓練にできないかと担当者間で模索しているところでした。
そんな中、ゲームで遊びながら自然に防災について学ぶことができる「災害モンスター探検隊」の世界観を取り入れることで、この課題を解決できるのではないかと思いました。
石橋さん:昨年のハツメイノハでの私のプレゼンの冒頭は、まさにその点を「ツカミ」にしたものでした。「災害は常に私たちの目の前にあるリスクなのに、その備えが必ずしも十分ではない。柏市でも防災訓練に参加する人は驚くほど少ない。これは国家の危機です!」と。コンテストの司会者がお笑い芸人の厚切りジェイソンさんでしたので、彼の持ちネタである “Why Japanese people!?” のセリフも添えて訴えました。審査員をされていた太田和美柏市長も大きく頷かれていました。そこからたったの数か月で柏市さんからお声がけいただけたことは本当に嬉しかったですね。
約350名の参加者が、今年は約8,000名に。子どもたちの楽しそうな顔を見て、間違いなく成功だと確信しました。
―今回の総合防災訓練では、どのようなことをしたのですか。
石橋さん:先ほども片上さんからお話がありましたが、今回の目的は大きく2つありました。ひとつはファミリー層の参加促進。「セブンパーク アリオ柏」という商業施設が会場だったので、施設の中にはたくさんのご家族連れがいらっしゃるんです。その方々を1人でも多く屋外の総合防災訓練の会場に出て来ていただけるようにすること。そしてもう1つは、各ブースの回遊性を持たせることです。
このため、「アリオ柏」館内と会場の中間地点の目立つ場所にブースを設置し、オリジナルで制作した災害モンスター・サイガモン®のトレーディングカードを無料配布しました。未就学児から小学生くらいまでのお子さんはモンスターのカードゲーム、大好きですよね。これが強烈な視覚的認知と訴求力を発揮して、想像以上に多くの方、特にお子様連れのご家族の方々にお越しいただくことが出来ました。
そして、回遊性を上げるために、株式会社イーシーナさんが全国で展開されている「ご当地ミッションラリー」を活用しました。 ご当地ミッションラリーは、地元をRPG(ロールプレイングゲーム)の世界に出来る、探索×体験スタンプラリーです。 これをプラットフォームとして、災害モンスター・サイガモンが登場する、いわゆるデジタルスタンプラリーを行いました。
https://missionrally.rogaining.space/gotouti-lp/
―たしかにこれは楽しそうですね!どれくらいの人に集まっていただけたのですか?
片上さん:昨年の参加者数は約350名だったのですが、今年は約8,000名もの方が参加してくださいました!スタンプラリーに参加したのは234チーム、700名ほどで、そのうち49のチームが20ヵ所以上の防災ブースを訪問しないと答えが判らないミッションをクリアして景品をゲット。これは想定をはるかに超える成果でしたね。
石橋さん:買い物に来ていたご家族が、なにか外が賑やかだなと思ってちょっと足をのばす、あるいは館内で見つけたミッションのパネルに従い屋外に誘導されると、子どもがモンスターのカードを見つけて「うわー!」と走ってくる。そんな感じで一日中人が途切れることがなくて、まったく休めなかったですね。お昼を食べる時間もなく、熱中症で倒れるかと思いました、甘く見ていましたね(笑)
―定性的な、参加者の体験価値についてはいかがでしたか。
石橋さん:災害モンスター研究所として通常やっているデジタルスタンプラリーは、デジタルの世界で完結したものです。立ち寄るポイントやクイズなどもデジタル世界の中でつくるわけです。一方、今回はリアルな防災訓練のコンテンツがあるので、参加者が足を運んで実際に体験をしていただくことで初めてわかるキーワードやクイズを用意するという設計になりました。そして、ポイントをゲットする意欲を掻き立てるギミックとして、子どもたちが大好きなモンスターカードゲームの世界観がある。これがとてもうまく機能したと思います。子どもたちがワイワイ騒ぎながら、楽しそうに各ブースを回っていく。まさに狙い通りでしたね!
片上さん:これは私の個人的な感覚ですが、従来と比べて、防災訓練としての中身の濃さも間違いなくあったと思います。何よりも子どもたちの楽しそうな顔を見て、間違いなく成功だと確信しました。やはり楽しみながら学ぶというキーワードは人を笑顔にすると担当者同士で確信しました。
石橋さん:20か所以上まわって景品をゲットしたのが49チーム、参加者の20%を超えたという定量的な結果を見ても、成功だったと思います。ほかにも楽しいことは色々ある休日のショッピングセンターで、楽しくなければ続けませんよね。
ライト層の取り込みは課題であり続けるでしょう。今年、新たな扉を開くことが出来たので、これをバージョンアップしていきたいと思っています。
―最後に、今後の展望などについてお聞かせください。
片上さん:来年度の具体的な計画はまだ決まっていないですが、いずれにせよ、総合防災訓練は毎年続いていきます。ライト層の取り込みは柏市にとって、また全国的にも課題であり続けるでしょう。一方でこのライト層が総合防災訓練を毎年楽しみにして参加する文化になると結果として、防災力アップに繋がると思います。今年、災害モンスター研究所さんとご一緒することによって新たな扉を開くことが出来たので、来年以降も楽しみながら学ぶ防災訓練を行っていきたいと思っています。
石橋さん:民間の立場で一人ひとりの防災力を上げる事業を進めている私としては、自治体さんとの協働も大切にしつつ、一方で自治体の防災活動に依存しないスキームをつくっていきたいと思います。今回大きな商業施設でやってみて、これは純粋に商業施設の集客イベントとしても成立するのではないかと思いました。民間の商業施設が、社会活動も視野に入れたマーケティングイベントとして「防災モンスター探検隊」を採用するようになったら最高だなと。そうすれば、年一回と言わず、頻繁に開催することが出来る。より社会的な効果も高くなります。それを目指していきたいです。
それにしても、柏市はアツいですね(笑)!
多くの自治体や大企業さんでは通常、新しいコト、やったことが無いことはNGとなることが多いんですが、柏では「それは日本初ですね!ぜひやりましょう!」となる。そして、UDCKを中心に住民のみなさんが楽しんで参加しているんですよね。
街づくりにコミットしながら活動ができる事業環境は貴重です。お世辞ではなく、そう思います。おかげでいま、大学や国と様々な話が進んでいます。これからも柏の葉で事業を加速していけるよう、がんばります!
PAGE TOP