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TOPICS【共創事例:国立がん研究センター東病院×三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド】 「ホテルと病院の連携により、今までになかった医療体験を提供したい。」

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  • 三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド
  • 国立研究開発法人 国立がん研究センター

がん患者さんをサポートするホテル『三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド』では、国立がん研究センター東病院との協業により、疾患別・治療法別の特別な宿泊プランを開発し、このたび運用を始めました。
病院の敷地内にホテルを開設した意図、今回の宿泊プランの内容とそれに込めた想い、今後の構想などについて、国立がん研究センター東病院の近藤美紀副看護部長と、三井不動産柏の葉街づくり推進部の増田大樹さんにお話をうかがいました。

病院に隣接したホテルがあれば、入院かご自宅かの二択ではなく、その中間的な段階をつくることができ、多くの患者さんのお役に立てると考えました。

―まず、そもそも国立がん研究センターが「がん患者さんをサポートするホテル」を敷地内につくることにした理由について、教えてください。

近藤様:私の立場から、私の理解の範囲内でお答えいたしますと、当院では「社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療を提供する」という理念のもと、「世界最高のがん医療の提供」と「世界レベルの新しいがん医療の創出」をビジョンに活動しています。患者さんにとって世界最高のがん医療、ということを考えたとき、たとえばアメリカでは多くのマグネットホスピタル(患者や医師・看護師を磁石のように引きつける魅力的な病院)は、必ず近くにホテルを持っています。そのことにより、多くの価値を患者さんとご家族にご提供されているんです。
当院は、日本を代表するがん医療専門の病院ですので、日本中から多くの患者さんがいらっしゃいます。しかも駅からバス・タクシーで5~10分ほどと、少し距離がありますので、患者さん、ご家族の皆さんのご負担を減らすためにホテルが必要だと考えました。病院と同じ敷地内にホテルがあるというのは、世界でもユニークな例だと思います。

―病院の事業者決定は入札だったとうかがっています。三井不動産が応札した経緯や理由について教えてください。

増田様:病院連携ホテルの事業者の公募があったのは2019年のことでした。私どもの知る限りこれは国内初の試みで、三井不動産としては、病院連携ホテルという新たなサービスを開発する機会になると考えました。デベロッパーとして商品の幅を広げることができる。それがまず1つめの理由です。
また、街づくりを通じて世界の課題を解決することを目的としている柏の葉スマートシティとして、ホテルと病院の連携による先進的な医療体験を提供したい、という想いがありました。柏の葉には最先端の環境があり、ここに来れば安心してがん治療を受けられるーそうした状況を実現することにより柏の葉スマートシティの価値を向上したい、というのがもうひとつの理由です。

―ホテル開設から約1年となった今年2023年の7月、疾患別・治療法別の特別な宿泊プランを発表し、運用を始めました。開発の経緯や理由について教えてください。

近藤様:日々の業務の中で私たち看護部の中では、「こういうサービスがホテルにあるといいのではないか」というアイデアが日々たまっていました。一方で当院では先進医療サービスとしてヘルスデータバンクとデータ連携した体調記録サービスを開発し、まずは大腸外科で導入することになりました。そんな感じでそれぞれの部署で別々にプロジェクトが進んでいたあるタイミングで、患者さんがすべてのサービスを受けられるように統合してパッケージ化しよう、ということになったんです。

当院の入院患者数は2022年度で1日平均397.8人。稼働率は100%を越えています。こんな病院はなかなか無いと思います。1人でも多くの患者さんを受け入れたいのですが、一方で、医療的には退院できる状況ではあるけれどもまだ自宅に戻るのには不安があるという患者さんもていねいにサポートしていきたいという想いもあります。
病院に隣接したホテルに疾患や治療法に特化したサービスがあれば、入院かご自宅かの二択ではなく、その中間的な段階をつくることが出来ます。設備やサポートが整っていないご自宅で不安や不便な思いをしなくて済みますし、一方で病院と違ってご家族がずっと一緒にいられます。
また、ホテルの専用プランを利用することで安心して退院していただければ、空いた病床に新しい患者さんを受け入れることができます。これなら多くの患者さんのお役に立てると考えました。

増田様:開業時にはまず多くの方のお役に立てるよう、最大公約数的なサービスを取り揃えました。ご利用いただいた方からはとても好評で、リピーターの比率も30%超ととても高い数字となっています。一方で、実際に運営を開始して患者さんの声を伺う中で、さらに患者さん一人ひとりの細かなニーズに対応したプランがあると、より安心して、より便利にホテルを活用いただけると思いました。

また、日本ではまだ治療とホテルを組み合わせるという文化・習慣が浸透していませんので、「治療中にホテルをこんな風にご活用いただくと、こういうメリットがあります」ということをわかりやすく伝えなければなりません。そのために、患者さんの日常のシチュエーションに寄り添った「痒い所に手が届く」プランを開発する必要がありました。

患者さんに「我慢・気兼ね・準備」が要らないようにしたい、そういう思いでプランを開発しました。

―まず第一弾として「大腸手術後宿泊プラン」を、第二弾として「放射線治療中患者さんプラン」を開発されました。その内容と、特に強調したいポイントがあれば教えてください。

近藤様:大腸手術後のプランには、特別メニューのランチ・ディナー、術後に適した設備・備品、ヘルスデータバンクと連携した体調管理サービスの利用サポート、ケアスタッフの24時間常駐などの病院連携などが揃っています。

放射線治療中の患者さん向けプランには、ホテルと病院が患者さんの情報を共有できる「コミュニケーションカード」、4泊5日の連泊を基本として体調に応じて延泊・減泊が可能、24時間利用可能な専用ラウンジ、バストイレ別のゆったりとしたツインルーム、患者さんからのニーズの高い備品・アメニティのご用意などのサービスをご用意しました。

[詳細ニュースリリース:https://corp.gardenhotels.co.jp/pdf/info-20230728-1.pdf

この中で私が個人的にポイントだと思っているのは、まずお食事です!ホテルのメインダイニングである地域の名店「丁子屋」さんが本気で取り組んで下さいました。ここまで手間のかかるメニューをつくっていただけるとは思いませんでした。患者さんが食べて良いものなのかどうかを考えずに、何も気にせずに美味しいものがいただけますし、ここでのお食事は治療を頑張っている自分へのご褒美になると思います。

また、ホテル客室内にオストメイトトイレを設置したのはおそらく国内初だと思います。これは私が強くお願いをして、かなり無理をして入れていただきました。現状5室ご用意しています。

その他のサービスも合わせ、患者さんに「我慢・気兼ね・準備」が要らないようにしたい、そういう思いで開発したプランです。

増田様:スマートシティとしては、データ連携による体調記録サービスをポイントとして挙げたいです。これはホテルでバイタルデータを記録する機器の貸し出しや利用方法のサポートを行い、病院では外来診察時にそのデータを先生に確認していただけるもので、機器を購入いただければご自宅でも利用可能です。

また、ホテル全体で言うと、ケアスタッフが24時間常駐していて、緊急の際にいち早く対応するのはもちろん、普段の話し相手になってくれるというのが素晴らしいと思っています。医療関係者でも家族でもないからこそ、気軽にお話できる、本音を言える、ということがあると思うんです。

抗がん剤治療をしている患者さん向けのプランや、ケア期の患者さんへのサービスなど、ホテルならではの、病院ではできないサービスを提供していきたい。

―本当に素晴らしいサービスですね。では最後に、今後の予定や構想について教えてください。

近藤様:がん治療には大きく分けて手術、放射線と抗がん剤の3種があります。今回、手術と放射線についてプランをつくりましたので、次は抗がん剤治療をしている患者さんをサポートするプランを考えていきたいです。とても長い時間待たされて治療が終わったらすぐ帰らなければいけない、という通院負担の大きい患者さんに向けて、ホテルを活用することで出来るだけ楽に治療を受けていただけるようにしたいと思います。

積極的な治療期が終わった後のケア期におけるホテル活用も、進めていきたいテーマのひとつです。ケア病棟、ご自宅に次ぐ第3の選択肢としてのホテル。大切なお時間の中で、お孫さんのお誕生会をするとか、ご本人のウェディングをするとか…病院ではできないサービスをホテルで提供できれば、と思います。万一の場合に備えた付き添いなど医療サービスとの整理などの課題は多いですが、将来的に出来るようになるといいなと思っています。

増田様:もう、近藤さんがご自身の事業のように語って下さる、想いのこもったお言葉がすべてです(笑)。国立の機関と民間が「すべては患者さんのために」という想いのもと、ここまでひとつになれているのは極めてまれな事例ではないでしょうか。
具体的な発表は少し先になりますが、いま複数の診療科さんと連携して宿泊プランを開発中で、年内にもいくつか新プランの運用を開始していきたいと考えています。
また、前回の記事(https://www.kashiwanoha-smartcity.com/info/topics/57/)でご紹介した「キヤスク」の服のお直しのようなソフトコンテンツも増やしていきたいですね。

これからもよりお役に立てるサービスを開発し、ホテルに滞在した際に安心、便利、快適に過ごしていただくことはもちろん、普段の生活に役立つような情報を知るきっかけになり、お帰りになった後の暮らしにも貢献できるような場となっていきたいと思います。

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